出席番号10番「斎藤麗美」

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「ダメだよお……危ないよ?きっと。うんそうよ。危ないのよ、ソレって……」


 斎藤麗美さいとうれいみが勇気を出してソロソロと手を伸ばすと、背後から小和刈が、斎藤の制服をチョコンとつまみながら心配そうな声を上げた。


「大丈夫よ……大丈夫」


 斎藤は、弱った二頭の虫の前にそっと掌を置いた。一度動きを止めた虫だったが、ゆっくり、ゆっくり、掌の上によじ登る。仲の良い兄弟みたいに、一頭の背中にもう一頭がくっついていた。


 可哀想だから。

 もちろんその気持はあったのだけれど、それよりも、あの人が探しているのはきっとこの虫たちだろうから……。斎藤は虫を触った事が無かったが、、意を決して手の中にそれを包んだ。


 ――もし、違ったら外へ逃してあげよう――。


 小さなキッカケかもしれないけれど、少しはお話できるようになるかもしれない。

 恋する少女は少年へと声を掛ける。


「あ、あの! 何か探しているみたいだけれど……、もしかしてコレかな……?」




〈終〉

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