出席番号10番「斎藤麗美」

  □

□□□□□

□□□□□

□□□□□

□□□□□

□■□□□


「ダメだよお……危ないよ?きっと。うんそうよ。危ないのよ、ソレって……」


 斎藤麗美さいとうれいみが勇気を出してソロソロと手を伸ばすと、背後から小和刈が、斎藤の制服をチョコンとつまみながら心配そうな声を上げた。


「大丈夫よ……大丈夫」


 斎藤は、弱った二頭の虫の前にそっと掌を置いた。一度動きを止めた虫だったが、ゆっくり、ゆっくり、掌の上によじ登る。仲の良い兄弟みたいに、一頭の背中にもう一頭がくっついていた。


 可哀想だから。

 もちろんその気持はあったのだけれど、それよりも、あの人が探しているのはきっとこの虫たちだろうから……。斎藤は虫を触った事が無かったが、、意を決して手の中にそれを包んだ。


 ――もし、違ったら外へ逃してあげよう――。


 小さなキッカケかもしれないけれど、少しはお話できるようになるかもしれない。

 恋する少女は少年へと声を掛ける。


「あ、あの! 何か探しているみたいだけれど……、もしかしてコレかな……?」




〈終〉

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る