銀の弾丸「コガネムシ(銀)」
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「……死にたく、ねえよお……」
プツリプツリと途切れる虫伝信からまるで最後の一滴を絞り出すように、グリーンの声が届いた。
――クソッ……クソッ!
シルバーは何度も
執拗に自分を追ってきていた捕獲者が男に体当たりをし、ガラス窓がけたたましい音をたてて割れ、そして破裂音の直後、
教室内にいた人間たちはザワザワと窓際に集まっていく。危険だという意識はないのか口々に「キレイ」だとか「スゲエ」だとか騒ぎ出した。
シルバーは苛立ち紛れに一度カリカリと前脚で顔を拭うと、意を決して
脚を縮め、頭部と前胸部の間にある隙間をガッチリと締め、背中から落ちるように少し体を捻る。カツンと乾いた音をたてて、教室の床に不時着した。
ギシリと
シルバーは確かに見た。焦りによって加速した思考によって、コマ送り画像のようにゆっくりとした視界の隅に一瞬、灰色の塊が映ったかと思うと、それは今まさに踏み潰されようとしていたグリーンの体を弾き飛ばしたのだ。グリーンは壁際までその身を滑らし、そこで動きを止めている。
虫伝信に反応は無いが、まだ希望は残っている。シルバーはシャカシャカと脚を早めた。
グリーンは無残な姿となっていた。
右中脚と右後脚が
「ハッ……、えらくハンサムになったじゃないか。グリーン……」
部下が危険な目にあっているのに何も出来なかった自責の念と、その部下がまだ息をしている事への安堵から、口からまるで吐き出すように、強がったセリフが溢れた。
「必ず連れて帰ってやるからな……」
シルバーはグリーンの体の下にその身を潜らせると両脚を踏ん張り、持ち上げ、そのまま背負ってズリズリと歩を進めた。
――もう少し窓際まで近づいてから、グリーンを抱えて飛ぶ。しかし……。
飛翔力の充填は完了していたが、グリーンは背中の違和感に不安を残していた。鞘翅の歪みがひどくなっている。果たして飛翔する事は出来るだろうか……。
思考を曇らせ、ふらつきながら進むシルバーの頭上に黒い影が射す。
巨大な手が近づいてきて、シルバーは悪寒で触覚を凍らせながら身構えた。
その手はシルバーの前方に、まるで救済の方舟であるかのようにフワリと床に降り立った。
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