出席番号17番「七門クルミ」
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教室内が騒がしくなると同時、
あ、ヤバイ、と思う間もなく、少し開いていたファスナーの隙間から小さな石みたいなモノが一つ、二つと這い出してくる。慌てて七門はその出口を抑えようとするが、すでに遅い。
二頭(二匹)のコガネムシは硬い鞘羽をわずかに持ち上げ、後翅を飛び出させると、勢いよくその場から、飛翔した。
◇
七門は昼休みに、校舎の横にあるタブノキの傍でそれを発見した。
コガネムシが群れで、日光を七色に反射させながらウジャウジャと固まっていたのだ。
「まあ、綺麗!」
思わず歓喜の声を上げた。元より、犬や猫といった小動物よりも、虫、蛇、蜘蛛といった、ちょっと女子なら敬遠しがちな種類の生物が好きだった七門にとって、そのコガネムシが蠢く様は好みにどストライク、キュンキュン最上級だったのだ。
草をむしり、かきわけ、見えやすくしてから、七門は上から横からジックリとコガネムシたちを眺めた。
赤銅色や緑褐色、銀に近い色をした個体までいる。ツヤリとした光沢はまるで宝石のようだった。宝石がヨチヨチと動き回り、重なり合い、キラリキラリと輝いている。
七門はその光景をウットリと眺めていたのだが、やがて、無性に自分の物にしたくなった。
「持って帰ろっと!」
丁度この日、七門はバスケットタイプの弁当箱にサンドイッチを詰めて持ってきていた。幅二十三センチ、奥行きは十二センチあって、深さも八センチ程。柳を編み込んであるもので充分にスキマもある。これならコガネムシたちを無理なく運べると考えた七門は、脇に置いてあったその弁当箱の蓋を開け、一つだけ残してあった卵レタスサンドを口に放り込んだ。……少し考えてから口からレタスだけ取り出して、空になった弁当箱にペイっと入れると、そこに、コガネムシたちを招き入れた。合計五頭のコガネムシが弁当箱に収まると、七門はそれを脇に抱え、満足して教室へと戻った。
◇
教室に大きな音が響くと同時、ビックリした七門の足が鞄に当たる。そもそも、弁当箱の蓋がうまく閉まっていなかったのか、それとも虫の不思議な力のせいか、とにかくも二頭のコガネムシは僅かにできた弁当箱の隙間から外へと逃げ出した。七門の手をすり抜けて、飛翔する。グルグルと旋回、上へ下へ。時に交差し、平行に進みながら――。
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