出席番号8番「来井句流詩也」
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斜め後ろから大きな音と振動。
――ハッ、アイツが盛大に転びやがった。ざまあみろ。ざまあみろ!――
来井句の、長い前髪で隠れてしまっている目の奥にある恨みの炎みたいなものがメラメラと踊り、弾けていた。
二学年の途中辺りから、来井句は不良グループからイジメのターゲットにされてきたのだが、そのイジメのリーダー格がまるで裏返った蛙みたいな格好で地べたに頭をつけているのだ。来井句にとってこんなに気が晴れる事はそうそうなかった。
思わず口角がニンマリと上がってしまいそうになったが、続けて後ろの席から、鈴を鳴らしたような声で「爆発」という言葉が聞こえて、来井句はハッとした。
――爆発と聞こえた。勘違いか……まさか計画がバレたか?――
現在、机の横に掛けてある鞄の中には爆弾が入っていたので、来井句は少々、バクという単語に敏感になっている。
何故、鞄の中に爆弾が入っているか。来井句には計画があった。
来井句はイジメを受けるという環境をどうにか改善する為、何度も教師に相談をしていた。しかし教師の返答は「外からも注意をするが、内面、つまり自分も変わっていかなくちゃ――云々」という、聞こえはいいが被害者当人に言わせれば全く的外れな意見だった。何もわかっちゃいない。来井句は自然と、学校そのものに恨みを抱くようになった。
情報をインターネットから拾い、身近な物を使って爆弾を作り上げた。コーラ系飲料と周りを糖衣やその他もろもろでコーティングしてあるソフトキャンディ、水風船、ガラス片、等を使ったお粗末な代物だったが騒ぎを起こすには充分。それを、スイッチで起動するようにして鞄の中に入れてきた。狙うのは放課後、皆が帰宅する為に集まる下駄箱周辺だ。
――復讐してやる――
来井句の頭の中にはその一念が渦巻いている。
転んだ不良の手が来井句の机に引っかかりそうになったので、慌てて鞄を胸元へ引き寄せた。もしかしたら少しの刺激でも爆発するかもしれない。手作りである為、そんな不安が頭をよぎったのだ。
爆発と聞こえたから少し焦ったが、計画が漏れたというのは、やはり勘違いだったのだろう。周りの生徒の視線は後ろに集まっていて、誰も来井句の復讐に感づいた様子を見せていない。
必ず成功させてやる――来井句は胸に爆弾をしっかりと抱え、騒がしくなる教室の中で一人、ほくそ笑んだ。
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