第13話 竜音、意味不明になる(前編)

 ある日の夜、友達と食事会を終えて帰宅した竜音だったが眼鏡を掛けて角刈りの少し老けた竜音の父・ひびきが玄関の前で星を眺めていたのであった。


 「お父さん!何してるの?」


 「ああ、星を眺めていたんだ。」


 「何でなの?」


 「いや・・・ちょっとな・・・」


 響は明らかに何かを隠すかのようなそぶりを見せていたが竜音は一切突っ込まずに響と月を眺めたのであった。


 「お父さん・・・月がきれいだね。」


 「うん・・・本当だね。」


 「?」


 「かえり・・・いや、何でもない。そろそろ部屋に戻ろう!」


 「うん!」


 一瞬悲しそうな目をした響ではあったが竜音は響に何も聞くことはなかった。



 〈翌日の夜〉


 この日は用事があり、市街地へと向かう竜音であったが市街地の外れへと来た時であった。


 「(外れはやはり人がすくな・・・)うっ!!」


 突然背後から殴られた竜音は気を失ったのである。



 〈ある建物の中〉


 高層ビルの上の階の部屋らしき場所に二人の男がいてそこにはガラス張りの箱が置かれていたのである。共に若く男性モデル級のイケメンでなお箱にはロープが十字に縛られており、中では封をされた大きな袋が動いていたのである。男の一人は箱に指を差してもう一人に質問した。


 「こいつが実験台ですか。」


 「ああ、何か空を飛ぶとか変な噂のある人物だ。実験位しても良いだろう。」


 「ハハハハハ・・・元気だよね。袋の動きからなかなか好奇心なやつと分かるな。」


 「長尾ながおさん・・・あんたなかなか冷血ですなあ。」


 そう言うと男は薬を入れたビンのようなものを懐から取り出すとそれを確認したもう一人は箱を縛るロープをほどいて箱を開けて袋の封を開けると中から竜音が出てきたのである。


 「ちょっと!!何するのよ!?」


 「何って実験だよ(笑)。この薬を飲めよな・・・!!飲ませますよ長尾さん!!」


 「ああ、飲ませろ白鳥しらとり!!」


 すると白鳥という男は竜音の口を無理矢理開けて飲ませたのである。


 「飲みやがれ、女!!」


 「ぐっ・・・!!」


 竜音は薬を飲んでしまい、まずかったのか少し咳き込んだのであった。すると竜音の目が一瞬赤く光り、二人を笑いながら睨み付けたのである。


 「ねえ、あなたたちって名前何て言うの?」


 「ああ、俺は長尾だよ。」


 「俺は白鳥・・・」


 「あら二人ともイケメンじゃない!?ちょっと遊んでほしいわ!!」


 「長尾さん・・・これ・・・」


 「ちょっと精神的に乱れる薬だった・・・こりゃまずいぞ。」


 すると竜音は二人に向かって走り出したのである。


 「ねー、長尾君!!白鳥君!!逃げちゃダメだよっ!!」


 「ぎゃーっ!!」


 ビルから悲鳴がこだましたのであった。



 〈翌日の朝〉


 学校へ向かうコーイチはいつも通りに歩いていると後ろから不気味なオーラを感じたのか後ろを向いたのである。


 「誰・・・ってなんだお前か。」


 「ねえ・・・コーイチ君!!今から遊んで!!」


 「ふぉぉぉ!!?」


 通学路になぞの悲鳴がこだまする。そして数分後、コーイチは顔を青くして教室に入ってきたのである。


 「コーイチ!!おはよう!!」


 「・・・」


 「どうしたコーイチ?顔が青いぞ。」


 「いや・・・ちょっと色々あってな・・・」


 「なんか元気ないぞ!お前の好きな韓流のビデオ貸したろか?」


 「いや・・・いい。すまない・・・気を使わせて・・・」


 「(コーイチ・・・お前一体どうしたんだ?)」


 コーイチの異変に騒々しくなっていたコーイチのクラスをよそに席に座りながら竜音はまた目を赤く光らせていたのである。


 「ウフフフ・・・まだまだ遊び足りないわね!!」


 一体竜音はどうしたのか・・・またコーイチの身に何があったのか!?

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