第12話 竜音、何かしでかす

 ある日の朝、研究所の中にいた岩野はあいにく竜音を狙っていたようである。


 「(今日こそあの子を・・・)」


 「では僕が捕らえましょうか?」


 「君は・・・周参見すさみ優斗ゆうと君か。」


 「彼女の動向は掴んでいます。必ず捕らえてみせますよ。」



 《翌日の竜音の教室》


 ある日、竜音のクラスに男子生徒が転校してきたのである。


 「今日から新しい仲間が増えました。周参見優斗君です!!」


 「はじめまして・・・周参見優斗です。」


 優斗はイケメンでスポーツ刈りの爽やかな男子生徒である。竜音は少し優斗に恋をしたのか少し照れていたのである。


 「(あ・・・良い子そうだな・・・!!コーイチくんよりかっこいい!!)」


 その日の昼休みに竜音は屋上で弁当を食べているとコーイチがやって来たのである。


 「やあ!!」


 「コーイチくん!?」


 「また恋をしている顔だな!!」


 「あ・・・いや・・・」


 「前は悪かったな。もうお前が恋をしても余計なことは言わないよ。」


 「?」


 竜音は以前の都議秘書の一件のコーイチの嫉妬に未だ気付いていなかったのである。


 「いや・・・何もないよ。まああの転校生について話をしたいなと思ってな。」


 「どうしたの?」


 「あの転校生・・・ちょっと怪しくてな。」


 「・・・やっぱり私の周りに来るのはそういう人ばかりね・・・」


 『そして私のこの一言を最後に私達は転校生の話をしなくなりました。』


 そして翌日、竜音の所属する『きのむら冒険部』に彼は現れたのである。


 「はじめまして皆さん。周参見優斗と申します!」


 「新しい新入部員君だね。これからもよろしくね!!」


 「・・・」


 昨日の話を忘れたのか竜音は優斗の姿を見て感動していたのである。


 「(優斗くん・・・来てくれたんだ。)」


 そして優斗は竜音の姿を見るとニヤリと笑ったのである。そして学校を終えると竜音は帰路についたのであるが背後から何者かに後頭部をこん棒のような物で殴られて竜音は意識を失ったのである。



 《岩野の研究所》


 岩野の元にある男性が現れたのである。男性は赤いジャージを着た優斗であった。優斗は大きな宅配用の箱を台車に乗せて持ってきたのである。


 「優斗くん、ご苦労様。」


 「案外簡単に捕まえましたぜ。」


 そして優斗は箱を開けて中の袋を取り出すと中身が動いている。その封をほどくと中から縄で身体を縛られていた竜音が出てきたのである。


 「優斗くん!!何するのよ!!」


 「すまんねえ竜音ちゃん。君に用事があってこうしたまでだ!!」


 「また私・・・騙されていたのね・・・」


 「フフフ・・・弱っている内に解体ショーでも・・・って何か雰囲気があれだな。」


 岩野は嫌な予感をしていたのであった。すると研究所の扉が破壊されたのである。


 「誰だっ!?」


 「誰って・・・?うちの大切な部員を拉致・誘拐するなぞ我々が許しませんっ!!」


 「わぁーーっ!!紀野部長!!太地さん!!古座川くん!!」


 「俺が来たからにはもう大丈夫だぜ!!」


 「太地くん、ドアを壊すとか乱暴な。だから僕は君のことが嫌いなんです。」


 「なんだとエージ!?」


 「まあまあ二人とも落ち着いてくれ。さあ優斗くんはどうする?」


 紀野はいがむ二人を落ち着かせると優斗に質問をしたのである。


 「何がですか部長?」


 「君はそこのおじさんを裏切るかそれか我々を裏切るか・・・」


 「結論を言うまでもない。こうして君達に害を加えた僕が君達の元に・・・」


 するといつの間にか太地は竜音の縄をほどいていたのである。


 「しまった!!」


 「優斗くん・・・なにをよそ見しているのかね!?」


 「すみません!!」


 優斗に怒鳴り付ける岩野。すると竜音は優斗に顔を近付けると『何か』をしでかしたのである。その瞬間、竜音は目をつむり優斗の顔は目を大きくして身体が一瞬固まったのである。


 「優斗くん・・・これが私の優斗くんに対する気持ちよ・・・」


 その時優斗の脳裏に過去の光景が浮かんだのである。



 《10年近く前》


 小学校に通う優斗は女子から毎日のように暴言を浴びせられていたのである。


 「うわ・・・犯罪者の子よ。」


 「お父さんが性犯罪して捕まったらしいよ。きもいわ。」


 「もう消えてほしいわね。」


 父親が何かしでかしたらしく女子から冷たい視線を浴びていた優斗だが竜音の『しでかしたこと』に対しての答えは?


 「岩野さん・・・すみませんがお別れです。」


 「!?」


 優斗は隠し持っていた爆竹を研究所内に投げ飛ばしたのであった。


 「みんな、逃げよう!!」



 《翌日、河川敷にて》


 竜音はコーイチと河川敷で座りながらいつも通りに会話をしていたのである。


 「お前はただのお人好しなのか人の心を見抜いているのか分かんねえな。」


 「ただのお人好しよ。」


 「そうか・・・あんなことをするとは・・・お前って女らしくないなあ。」


 「余計な一言を言わないの!!」


 竜音はコーイチの背中を叩くと彼は転げ落ちて川に落ちたのである。


 「わぁーーっ!!」


 「コーイチくん!?」


 “ドボッ!!”


 “ザッ!!”


 「川落ちたじゃねえか!!アハハハハ!!」


 「コーイチくん?何で笑ってるの~?でも私も笑いたくなってきたわ。アハハハハ!!」


 謎に包まれた優斗の過去、岩野と竜音のこれから・・・色々な問題を抱えながらこれからも時は進んでいく。 

 



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