第2話 竜音、テレビに出る

 ある日の朝、竜音は黒いワンピース、黒いタイツ、黒い長めのブーツという服装でのんきに街中を歩いていたのであった。その様子はこの前の出来事が本当にあったのかという感じである。


 「今日もなーにか楽しいことはないかしら~っ!?」


 とりあえず何も予定がないままあるビルの前にやって来たのであった。すると・・・


 「君、ちょっと時間いいかな?」


 「はい!!どうされましたでしょ~か~!?」


 ある背広姿の男性が竜音に声をかけてきたのである。時間があるのでとりあえず対応する竜音であったが突然彼は言う。


 「ねえ・・・君テレビに出ない?」


 「え・・・ええ~っ!?」



 {コーイチの部屋}


 その頃例の男子学生・コーイチはテレビをつけたのである。


 「さあ!!『ええがな』の時間だな!!これを見ないと昼は楽しくないぜっ!!」


 コーイチのいう『ええがな』とは人気番組【わろうてええがな!】という人気番組である。昼のお茶の間を楽しませるたくさんの企画が視聴者から支持されているバラエティ番組である。


 「これを見ないと本当に始まらないぜ。」


 この日はステージの上にカーテンが5つあるセットが用意されている。


 「今日は特技自慢ファイブか。」


 コーイチのいう【特技自慢ファイブ】とは一番左端のカーテンの人から自分の特技を自慢する企画である。左から青、緑、黄、赤、茶のカーテンがならびその中に特技を自慢する参加者がいるのだ。勿論カーテンの中に誰がいるか視聴者にも出演者にも分からないが・・・


 『まずは青のカーテンの方はけん玉が得意だそうで・・・』


 「わ、すごい!!けん玉のプロかこの人!?」


 次々披露される特技自慢の参加者の特技を見て感心するコーイチであったが最後の参加者の待機する茶のカーテンが開くと彼の顔は青ざめたのであった。


 『本日最後の参加者は綺麗な方ですね!!』


 「あ・・・あいつは・・・虎ヶ島!?」


 なんと最後の特技披露は竜音だったのだ。


 

 {テレビスタジオ}


 カーテンの中から登場した竜音はニコニコしながらサングラスをかけた男性司会者のトークを聞いていたのである。


 「えー、君は何が出来るのかな?」


 「空を飛べるようになったんですよ!!」


 「え?マジックですか?是非とも見せてくださいね・・・」


 司会者は疑い深い目をしながら笑っていたが竜音は堂々としていたのであった。そして・・・


 「いきますわよ~!!」


 すると竜音は大きな天使のような羽根を背中に生やすとスタジオ内を飛び始めたのである。


 「うわぁーーーいっ!!気持ちいいーーーっ!!」


 観覧者も出演者もスタッフも皆が驚いた表情をしていたのであった。



 {コーイチの部屋}


 勿論コーイチもこれを見て驚いていたのであった。


 「あ・・・れ・・・あいつの羽根って幻覚じゃなかったのかよ・・・・・・!?やっぱり面白いなあ!!」


 そしてテレビが終わるとワクワクな気持ちを抑えきれないコーイチは放送が終わってからも動画サイトに早速アップされたこの日の放送を見ようとした時だった。コーイチは部屋を見渡すと窓から竜音が見つめていたのである。


 「わーーっ!?虎ヶ島さん!?なぜここに!?」


 驚きはしたがコーイチは窓をとりあえず開けると竜音はブーツを脱いで部屋に入ってきたのである。


 「コーイチくん!!見た!?見た!?見たよねーーっ!?見てないなずがないよね!?」


 「ああ・・・見たよ(笑)。てか何で俺の家に?」


 「コーイチ君は見たと思っているからね(笑)。はるみっちは見てなかったんだって!!プーッ!!」


 「俺に当たるな。」


 なぜかほほをふぐのように膨らまして怒りを露にする竜音であった。ただ竜音はコーイチに言う。


 「はるみっちが私のことに気づくまで空を飛べることは内緒だよ!!」


 「あ・・・ああ・・・」


 竜音はコーイチに対して笑顔で友達には内緒にしてほしいと頼むとコーイチは少しおどおどしながら頷いたのである。


 「じゃあね~っ!!コーイチくん!!」


 「あ・・・ああ・・・」


 すると窓から出て長ブーツを履いた竜音はどこかへ飛んでいったのである。


 「(あいつ、どこへ飛んでいくんだ・・・っていうか飛ぶ姿を見せるなバカ・・・)」


 竜音の自然体の姿にコーイチはハラハラドキドキしていたのであった。



 勿論翌日、空を飛ぶ女子高生が世間を賑わしたのであった。竜音はそれに気付いてはいないようだが・・・



 {とある駅のホーム}


 「(ハハハ・・・この女がそうか。探していたぜ・・・)」


 駅のホームでニット帽を深くかぶりジャンパーを来たあやしい男性は新聞記事を見ながら不気味な笑いを見せていたのであった。

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