第2話

〜次の日の朝〜


『ユリウス宅』

既に7時をとうに過ぎており急がなければ出勤時間に間に合わない時間になっていた。

だがシリウスは未だ惰眠を貪っている。


『学園の校長室』


「ではヴェルデ校長、宜しくお願いします」


エリシアは対面に腰掛けている白髪の老人ヴェルデに頭を下げる。


「あい分かった君ほどの魔術師が推薦する人物だ、さぞ優秀な者なのだろう?」


ヴェルデは笑顔を作りながら今日就任する予定のユリウスについてエリシアに尋ねる。


「確かに優秀な人物です、彼ほどの魔術師はそうはいないでしょう」


こうして強制的に決められたユリウスの講師としての地盤はエリシアによって着々と固められていた。


 エルキシア皇国、温厚な気候に緑豊かな土地に国土を構える魔導国家。

その西部に位置するコルド地方にコルディスという都市がある。そこには世界に数ある魔術学園の中でも最高峰と言われているアステリア学園が建てられ学園と共に発展した魔究都市、それがコルディスである。

そんな街の一角に建てられた一つの屋敷、そこに人組みの母子がいた。

夕日に照らされ輝く麦畑の様に美しい金髪の髪に大きな蒼い瞳、何もかもを包み込むような雰囲気を醸し出している母と母親譲りの金髪の髪に少し吊り目ぎみな蒼い瞳、母とは違いプライドが高く勝気そうな雰囲気がある年の頃は15,6くらいの少女。


「リリアちゃん、二年生になってまだ二カ月なのに早く準備して行かないと遅刻しちゃうわよ〜」


「わかってる!もう準備出来てるから大丈夫よ、それじゃあ、行ってきます」


 そう言って家を出るリリアの制服はアステリア学園の制服である。

品格を重んじるこの学園の制服に無駄な露出などは無いものの女性のボディラインを強調しつつ上品さを出しているフリルシャツに生地を贅沢に使ったハイウエストなフワリと広がる青のバルーンスカート、そして魔術師の証であり学園の生徒の証である校章が刺繍されているケープ。特殊な素材で作られているこの制服は気候に合わせて生地の温度が調節され夏でも冬でも対応できるように作られている。

しばらく歩くリリアの目の前に鉄柵に囲まれた魔術学園の校舎が現れ今日も平穏な学園生活が始まる予定なのであった。


 アステリア魔術学園。この国の人間、特に魔術師にとってこの名を知らない者はいないだろう。300年前、世界最高峰の魔術師と言われているアルーノと言う大魔術師が自らの巨額の富を惜しげも無く投じ設立された学園、それがアステリア魔術学園なのである。

この国が魔導大国として名を轟かせたのもこの学園のおかげであり、最先端の魔術、錬金術を学べる学園として周辺諸国にも高い知名度を誇っている。

アステリア学園に入学した生徒、講師はこの学園の生徒、講師である事に誇りを持っており授業に遅刻、サボりなどと言った他の一般の学園にある低い意識はまず発生しない。発生しない筈なのだが……

 リリアが学園に着き授業の始まりを示す学園の鐘が鳴っても一向に講師が教室に入って来ず生徒達は困惑した。


ざわざわざわ


「何で誰も入ってこないの?」


「もしかして遅刻?」


「え?この学園の講師でそんな意識の低い人いた!?」


「おいおい、せっかくの授業の時間がもったいねぇよ」


『今日このクラスに定年退職を為されたドレイ先生の後任に新しい講師が就任してくる』

朝のホームルームでそう説明された講師が現れない事に生徒達は不安を募らせていた。



一方その頃のユリウスといえば


「おぉ〜見事に遅刻しちまったな、まぁ約束通り学園には来たし問題ないだろ」


遅刻しているのにも関わらず酒を飲みほろ酔いながら悪気もなく平然と学園の門を通っているところであった。


「もう我慢できない!私職員室に言って先生呼んでくる!」


我慢の限界を迎えたリリアは席を立ち職員室に向かおうとしたその時。


「いやー悪い悪い、昨日酒飲み過ぎてよ、遅刻しちまった」


やっと講師が到着したらしい。すでに授業時間は半ばを過ぎている、この学園始まって以来の大遅刻だ。

この学園の生徒である事を誇りに思っている気持ちが一段と強いリリアは遅刻してきたシリウスに対して説教を始める。


「あなたねぇ、どういうことなの!遅刻よ遅刻!

この誇り高いアステリア学園の講師としての自覚は無いの!?」


「あーいちいちうるせぇな、理由はさっき説明したろ?

もう時間が半ば過ぎてんだ、さっさと始めようぜ」


リリアの説教など気にも留めずシリウスは授業を始める。


「えぇと、このクラスは何処までやってんだっと、魔術基礎理論第6節までだな...

よーしお前ら授業始まるぞ〜」

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呑んだくれ講師の近代魔術学 ユージーン @yoshiyuki9412

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