呑んだくれ講師の近代魔術学
ユージーン
第1話
これはとある部屋での一風景
「あれ?酒が無くなったぞ、おーい!
もう一本おかわりたのむ〜」
誰が見ても酔っ払っていると分かるだらしない顔をした男は空になった酒瓶を持ちあげてテーブルをはさんで正面に座っている妙齢の女性に頼み込んでいた。
「頼むよエリシアちゃん、コレで最後にするからさぁ」
酔っ払いの頼みにこめかみをピクピクさせながら静かに怒るエリシアと言う名の女性は男にこう言い返す。
「ユリウスさん、さっきもその一本で最後にするって言いましたよね?」
「はっはっは、エリシアちゃんは厳しいな
なっ?頼むよホントに次で最後にするからさぁ」
女性の怒りもなんのその軽くあしらい、なおも酒を要求する。
「ホント貴方の相手は疲れますね、いいですか?本当に次で最後ですよ」
疲れた表情で要求を受け入れエリシアはテーブルから立ちあがり棚にあるお酒を取りに行く。
「愛してるぜ、エリシアちゃん!」
「はいはい、そのセリフもさっきも聞きましたよ」
「よーし、なら今度は態度で示そうか!
愛してるぜ、エリシアちゃ~ん」
そういって満面の笑みを浮かべ、エリシアに抱きつこうとするがエリシアはユリウスを冷めた目で見ながら対応する。
「言葉だけで結構です、ていうか近づかないで下さい」
「風起こり、弾けろ」【エアーボム】
そう言いながらデコピンを食らわすと
「ゴファ!!」
ユリウスは重量物に撥ねられたように棚からテーブルの方にすごい勢いで吹き飛んでいった。
一見、物理的に吹き飛ばしたように見えるがデコピンを食らわす一瞬の間に指先と額の間に圧縮された空気が風船が破裂するように弾け飛んだのだ。
「おいおい、魔術を使うなんて殺す気か?
オレじゃなきゃ今ので死んでるぜ?」
そう言いながらも先ほどの凄まじい衝撃をモノともせず平然としているとユリウス目の前に酒瓶が付きつけられる。
「当然の報いです
それに貴方はこのぐらいの攻撃で
死ぬような男ではないでしょう?」
「そりゃあ、そうだけどよう
もっと優しくしてくれてもいいんじゃないか?」
エリシアは溜息をつく。
呑んだくれているだらしないユリウスとは対照的にエリシアは気品の中にも妖艶な色香を醸し出している美女だ。
年齢は二十歳程だろうか、その髪は妖艶さを惹きたてるようなサイドアップに纏められた紫色の髪、血を連想させる真紅の目に、その肢体は完璧なプロモーションを誇っている。
二人の見た目による社会的地位は一目瞭然だ。
「ではそろそろ本題に入らせてもらいますよ
貴方には魔術学園アステリアの講師として働いてもらいます」
「断る!、グファ!!」
エリシアが本題を述べると同時にその提案を即座に拒否した。
するとエリシアが間髪いれずにデコピンを食らわし、先ほどと同じように吹き飛ばされる。
「あなたに拒否権はありませんよ
いつまでもグータラ酒漬けになって仕事もせず呑んだくれているなんて他の誰が許しても私が許しません。
仕事は明日から始まりますので必ず出勤するようお願いします。出勤に必要な書類は机の上に置いておきますので必ず持って行って下さいね。
ちなみに出勤しなければ罰則が設けられるのでくれぐれも欠勤しない事いいですね?
それでは私は用が済んだので帰ります」
そう言って早々に部屋を出て行くエリシアを倒れた状態から見送り、ゆっくりと立ち上がりながら書類を手に取る。
「おいおい、マジで俺に講師なんてやらすつもりかぁ?
ハァ〜折角呑んだくれの怠惰な生活を満喫してたってのにめんどくせえな
もうヤケ酒だ!飲むぞー!!」
明日は出勤と言われたにもかかわらずヤケ酒を始めてしまう。
果たしてユリウスの講師生活はどうなってしまうのか、それは神のみぞ知る…
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