第2話「女神様と手を組もう!」


 そして俺はその兵士に案内してもらい、

 街、といってもスラムみたいな場所だがそこでこの世界について色々教えてもらった。


 ここは前世のゲーム文化に基づいて形成された比較的新しい転生場所ということ。

 今いる場所はその世界でも極悪地帯と言われているFPSワールドで、

 頭のネジが飛んだやつらしか足を踏み入れないこと。

 ゲーム文化に基づいて形成されただけあってルールに縛られているのがこの世界の特徴で、

 例えばFPSワールドでは街に設定された場所ではPK(プレイヤーキル)はできないこと。


 他にも……、と心で復唱している時だった。


「ん? なんだあいつ、あの変な服装の外人女まさか……」


「びえーん、びえーん、ひどい。ひどすぎます全能神

 この華憐でかわいい私をたった一人適当にダーツで転生先決めただけで、

 罰といってこんな世界に引きずり落とすなんて~」


 あの外人女、俺をこの地獄に叩き落しやがったダーツ女神じゃねえか!

 ざまあみろ。あいつも罰を受けたようだな。


「何が修行して一からやり直してこいだよ~。

 せめて女神スキルはく奪しないでくださいよ~

 ねえどこかで聞いているんでしょ全能神、ご慈悲! ご慈悲を~」


「あー、どこかで聞いていらっしゃる全能神さん?

 さっきのご慈悲とやらいらないですよ。

 俺は死にかけました。転生先でさっそく二度目の死を体験するところでした。

 この! くそみたいな女神が適当にダーツで転生先を決めたせいで!」


「あー!! あなたは私が地に落ちることになった悪の根源であるパンツ一丁ゲームオタク!」


「貴方のせいで私はこんな目に合っているんですよ!

 貴方からも全能神に頼み込んで下さい!」


「だれが頼むか!」


「さっきも言ったが俺は既に二度目の死を被るところだったんだよ!

 お前も俺と同じ道を歩んでもらうぜ」


「な……なんて外道、女神であるこの私に死の恐怖を体験しろと……!」

 許せません。地獄送りにするべきでした」


「ふん、もう後の祭りだぜ、なんとでもいいな」


 もう地獄のような体験は経験済みだがな。

 しかし俺はこの世界を生き延びる術を持っているみたいだ。


「どうやら俺はこの世界で生き抜くにはいいスキルを持っていたらしい。

 お前はせいぜいどこかで野垂れ死にな」


 ここがゲームの世界ならば、

 ゲームの概念があるならば、

 どこかを探せばまた俺の気に入るゲームがあるはずだろう。

 自分が実際に動くなんてそれはもはやゲームではない。

 俺はクーラーの効いた部屋でモニターを通して自由自適にゲームに没頭したいんだ。

 その地位を手に入れるためがんばってやる。


「じゃあな」


「ちょ、ちょーとまってください」


「私を一人にする気ですか?

 お互い困ったもの同志になったわけですから、ここは協力しましょうよ~」


「ちょ、お前! しがみつくな!」


「お前女神スキル消えたとか言ってただろ。そんなお前はどうせポンコツなんだろ。

 なんとなく分かるぞ。そんなやついらん!」


「お願いです~。

 一人にしないでください~。心細かったんですよ」


 涙目で必死にしがみついてくる。まじで鬱陶しい。

 悪いが俺は今までのゲーム生活でもうまいやつとだけ組んできた。

 例えどれだけ可愛かろうが、良い奴であろうが、

 そんなのは実力と比べたら糞だ。


 俺はこのスタンスを変える気はない。


「……分かりました。

 それでは私がこの世界で認められ、女神の地位に返り咲いたその暁には

 まず貴方を元の世界に戻してあげます!

 本当は元の世界に戻って文字通り死ぬほどはまっていたゲームをしたいんでしょ?」


 なんだって……? 

 さきほど実力のあるやつとしか組まないと言ったがあれは嘘だ。

 俺に利益をもたらす者とは嬉々として手を取り合おう。


「その話、本当だろうな……?

 嘘だったら全能神とやらにお前を詐欺師として提訴するからな?」


「それは絶対やめてください。地獄に行かされかねないです……」


「お前の言う通りだよ

 俺は本当は日本に帰ってあのFPSゲームがやりたいんだ。

 それが叶うならお前のような元女神のダーツ女とも手を組もう」


「元女神も、ダーツ女もやめてください……。

 私はサハクイェル・ポンドと言うんです。以後お見知りおきを」


「よろしくお願いしますね? 佐倉 柚木くん」


「まあ、よろしく頼むわ。ちゃんと働いてくれよサハポン?」


「サハポンはやめてください!!!」


 ―こうして俺とサハポンとのゲーム攻略が始まったのだった。

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