Game1『FPS』
第1話「FPSゲーマーが戦場に」
「そして今に至るのか……許せない……。
あの女神絶対いつか復讐してやる……」
柚木はそう呟きながら廃墟施設のような所で目を覚ました後、
死んだときに着ていたであろうパンツ一丁の姿で
(オンラインゲームをやるときは大体この格好なのである)
どこを目指すわけでもないがその一帯を歩いていた。
どこなんだここは……。
なんだか世紀末のような世界だな。
俺がやっていたFPSゲームの世界にちょっと似ているぞ。
プシュン……。プション……。
「ん……なんだ? このどこかで聞いたことのある、まるで弾丸が空を切るような音は……?」
ははは、嫌な予感がしてきた。
この何万回、いや下手すると何億回も聞いてきたこの音、
俺はゲームの中でしか聞いたことはなかったが意外に現実と酷似しているんだな。
いやー、技術の進歩ってすごいね。ここまで変わらないとは。
カチッ……。
「あ、今の音は誰かが手榴弾のピンを開けた音だ!
音の方向から大体、32m後方の物陰ってところかな?」
冷静に判断してニコニコしていた次の瞬間、
ものすごい爆裂音が一体に鳴り響いた。
柚木は何とかその場の物陰に伏せ爆裂破を回避した。
うおおおおお!!! やべえええ!! ここ地獄だろ!
あいつ、地獄は回避できたって言っていたのに、絶対嘘だろ!
なんでパンツ一丁で戦場に身を置いてるのおお!
「おい、やったか? ここ一体の敵は排除したはずだろ。
あのパンツ姿の奴は一体誰だったんだ? とにかく、死体を探せ!」
なにか物騒な言葉が聞こえますな。
だが残念だったな、一兵卒よ。
俺は17年間の人生の半分以上をFPSゲームに捧げてきた男。
例えパンツ一丁で突然の事態であっても、このような戦場を掻い潜れるのである。
(ふふ……俺は生きてるぜ……? 俺を殺せるのはゲームのみだ)
「って、あ……」
「発見したぞ! こんな物陰に伏せてやがった。武器は持っていない模様、どうする班長?」
「あんな軽装備でこのS級危険地域を生きていた奴だ!躊躇したらお前がやられるぞ。殺れ!」
「ちょ、ちょ、ちょーーとまった!!」
「待ってください。えっとですね私、先ほどこの世界に転生させられまして、何も分からないんですよ。
だからですね、痛いやつは簡便してもらえませんかね?」
(ち……ちびりそう……)
「転生……?転生なわけないだろう」
「転生者は最初各地の教会からスタートすることは基本だろうが。
そもそもこのFPSワールドには転生場所なんてないんだよ。
自分の知識不足を恨みな。死ね!」
「っち……」
相手の銃口先と手の動きから予測して間一髪の所で相手の弾丸を躱す。
そして銃の反動で握力が下がった所を蹴り上げる。
「なに……!?」
相手のハンドガンが宙に舞う。
それを素早く柚木はキャッチした。
そしてそのまま躊躇なくその引き金を三度引く。
乾いた音が鳴り響いた。
(動く……!この世界では今までゲーム中に考えていた身のこなしが思うがままだ……!)
「ぐあああああ!って俺には当たっていない……?」
「その身のこなしにビビっちまったが射撃スキルはFランクみたいだな。
それではどうせこの世界では生きていけない。ここで楽になりな」
「それはどうかな。
何故銃声がこれだけ鳴り響いてもお前の仲間は助けにこない?」
「な……まさかお前……」
この場面で目の前の武器を奪った者を倒したところで柚木は助からなかっただろう。
前方、後方、左方に足音と声から味方が潜んでいることは分かっていた。
奴らを先に倒さないと次の盤面で柚木は詰みであったのである。
「信じられない……。いつの間に位置を特定した?
いや、位置を特定したところで潜んでる相手にこの距離から急所に三連続ヒットさせるなんて。
クソが……相手が悪かったようだ。ひと思いに殺してくれ」
「いや、殺さないよ。その代わりこの世界のことを教えてくれ」
俺はマジで今さっき転生してきたんだよ。
こいつはあり得ないと言っているがそれは変わらぬ真実である。
「頭おかしい女神がダーツで場所決めやがったせいでたぶん、ちゃんとしたところからスタートできなかったんだろうな」
「え、そんな女神いるの……?」
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