プール!①

父さんの再婚と引っ越しから1週間が過ぎ、8月に入った。真莉子さんや莉奈ちゃんとの暮らしにもようやく慣れた気がする。


そんなある日の夕食後、僕・美穂姉・莉奈ちゃんの3人は父さんからあることを言われた。


「今日、結婚祝いでプールのチケットを5人分貰ったんだが、父さんも母さんも当分仕事漬けで行けそうにないからあげるわ。お前らで誰か誘ってこい」


父さんはそう言い、机にプールのチケット5枚を置いた。


「僕は大丈夫だけど美穂姉はバイトがあるし、莉奈ちゃんはこの時期、ちゃんと休日があるかどうか・・・」


僕はそう言い、美穂姉と莉奈ちゃんにいつ休みか訊ねる。2人とも偶然、同じ日に休みを入れていたらしい。そして余ったチケット2人分で誰を誘うか。まずは真綾を誘った。すると真綾は「その日なら大丈夫!」と言ってくれた。そしてあと1人誰を誘うか。結局、僕とは幼稚園以来の付き合いである橘理香たちばなりかを最初に誘うことにした。でもあいつ部活で忙しいからなぁ。そう思いつつ、理香にLINEを入れる。すると理香は、「その日なら部活ないよ」という返事があった。




そういうことで、僕・美穂姉・莉奈ちゃん・真綾・理香の5人でプールに行くことになった。朝8時・駅前に集合と言ったが、結局集合時間前に5人全員揃ったため少し早く目的地に向かうことになった。


「美穂さん、久しぶりです。で、あなたが莉奈ちゃんだっけ?よろしくね」


と理香は喋る。理香は僕や真綾と同い年で、通う高校も同じというくされ縁だ。しかし、高校に入ってからの2年間ずっと俺や真綾とは別のクラスで、おまけに理香はソフトボール部の活動で忙しくなったため、最近はあまり話していなかった。まぁ一言で言えば、僕と対極の位置にいる幼馴染みだ。昔から男女関係なく誰とでも話していたな。




電車に乗ること約40分、僕達5人は目的地のプールに着いた。このプールは日本最大級の室内プールで、夏休み中は屋外施設も開放される。この日は平日とはいえ、夏休み中ということもありオープン前からかなりの客が列を作っていた。


そして朝9時、オープン。僕はまず5人分の荷物(浮き輪とか)を抱えて、プールサイドの6人分の椅子があるテーブルに向かった。荷物を置くと先に更衣室で水着に着替える4人が来るまでそこで待機する。そして30分後、水着に着替た4人が現れた。4人は姉・義妹・いとこ・幼馴染みで決して恋愛には発展しないが、4人とも綺麗だ。テレビで見る芸能人に見劣りしない。特に水着姿の莉奈ちゃんには目を奪われる。


4人がテーブルの椅子に座ると、僕は更衣室で着替えを済ませた。男の着替えは短時間で済む。そしてシャワーを浴び、4人が待つプテーブルへ向かった。


プールでは4人が「ナンパされたら困る」と僕に言ってきたため、常時5人で行動することになった。僕はせっかくなのでまず、屋外にあるウォータースライダーに誘った。このウォータースライダーは「水のジェットコースター」と言われ、首都圏最大級の規模だという。




・・・で、そのウォータースライダーには5回乗った。僕と莉奈ちゃんはさすがにもうこれ以上は乗れないと言ったが、真綾や理香はまだ乗りたいと言う。結局真綾と理香はそのまま引っ放して、僕・美穂姉・莉奈ちゃんの3人はプールサイドに戻った。


プールサイドで休憩を取っている間、僕はトイレに向かう。そしてトイレから出て売店で飲み物と軽食を買うため列に並んでいた時、後ろから肩を叩かれた。僕はすぐ後ろを振り向く。後ろを振り向くと、ルックスの整った女性がいた。綺麗な長い黒髪となぜか似合う水着姿が特徴的だった。どうやら僕はその女性に肩を叩かれたらしい。歳は僕より年上、美穂姉と同世代かもう少し上だと思う。しかしこの女性、どこかで見覚えがあるような・・・




「そこの君、私と遊ばない?」




その女性は僕にそう言ってきた。なんか僕、逆ナンされました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る