妹ができた
母さんが亡くなったのは15年前、
そして、僕を産んで1年が経った頃であろう、母さんは体調を崩し、がんであることがわかったという。そしてがんは次第に悪化し、1年後・・・母さんは天国に旅立った。
母さんが亡くなってからは、婆ちゃんや叔母さんが母親代わりになっていた。物心がついたときは、叔母さんが母親だと思っていたくらいだった。何分、母さんが亡くなってからはずっと祖父母と叔母さんと同じ家に住んでたくらいだからね。
叔母さんの一人娘で同い年のいとこ、
まぁ、そんな感じで僕は祖父母と叔母さんといとこが住む家で15年間を過ごしてきた。
そう、高2の夏、父さんが突如再婚するまでは・・・
◇ ◇ ◇
それは7月の下旬、1学期の終業式が終わった日のことだった。
終業式が終わり、帰りの電車で夏休みの課題が多くてかったるいと思っていたところ、真綾から「大和、あんた夕方から用事あるんでしょ?」と言われた。そんな用事あったっけ?初めて聞いたぞ。
自宅に戻ると、叔母さんはパートに出かけており、家にいたのは定年をとっくの昔に過ぎた爺ちゃんと最近まで体調を崩して入院していた婆ちゃんだけだった。俺の自宅は元々祖父母が住んでいた家だったが、母さんが亡くなってすぐ父さんが実家に戻りたいと言って、僕と美穂姉もこの家で生活をするようになった。そしてほぼ同時期に、理由はよく知らないが離婚したという叔母さんと真綾もこの家で生活するようになった。そんな感じで僕は15年間、この家で過ごしてきた。
その後美穂姉が大学の試験を終えて帰宅、夕方には叔母さんがパートから帰宅し、夜の7時前には父さんも仕事から帰ってきた。
父さんが仕事から帰ってくると、父さんに連れられ、美穂姉とともに近所のレストランに入った。
レストランには見慣れない女性がいた。どうやら父さんの知り合いらしい。年はかなり若く見えるけど40歳だと父さんが言っていた。しばらくして、中学生くらいの女の子がやってきた。その女の子は夏にも関わらず帽子とマスクを被っている。
「トイレ長かったわね、もう来てるわよ」
とその女性が言う。どうやらその女性の娘さんらしい。
「すいません・・・」
とその女の子は言い、席に座ると帽子とマスクを取り外した。そして、僕はあることに驚愕した。見たことのある風貌と聴いたことのある声。その女の子は声優・
そして父さんはこう言った。
「美穂、大和。まだ紹介がまだだったね。父さんはこの人と結婚することになったんだ。新しいお母さんになる
さらに父さんはこう言う。
「確か莉奈ちゃんは声優なんだっけ?大和くん、莉奈ちゃんが出てるアニメはよく見てるしラジオも聴いてる。それに莉奈ちゃんのCDや写真集もみんな買ってるみたいだよ(笑)」
やめてよ父さん!つーか莉奈ちゃんソロデビューもしてないし、写真集も出してないよ!CDはアニメの主題歌やキャラソンだし、写真集はアニメ雑誌のグラビア。しかし、父さんの一声で僕の世界は一変した。歳は僕から見たら1歳下。背は少し低いけど、綺麗な長くて黒い髪と雪のように白い肌。そして女優並みに美しいルックスと少し特徴のある声とトップクラスの歌唱力。そう、父さんの再婚相手の娘はりーなこと松永莉奈その人だったのだ。つーか松永って名字、芸名だったんだな・・・
「美穂さん、大和さん。よろしくお願いします・・・」
莉奈ちゃんのその声に、僕は唖然としていた。
「あなたが莉奈ちゃんね。よろしく」
と美穂姉は言う。しかし僕は、
「あ、君が莉奈ちゃんか。うん、よろしく・・・」
としか言えなかった。そして、
「大和くん、人見知りだから今すごく緊張してるんだよ・・・」
と父さんが言った。そして食事に入る。どうやら真莉子さんは7年前に離婚したという。7年前といえば莉奈ちゃんが声優デビューする前で、子役だった時期か。そして僕は真莉子さんに莉奈ちゃんがなんで松永なんて芸名を使っているのかと訪ねたら、どうやら松永は真莉子さんの前の夫の名字らしい。
そして食事を終えると、莉奈ちゃんは僕にこう言ってきた。
「大和さん。私、あなたにとって迷惑になるかもしれません。
そして僕はこう答える。
「迷惑だなんてとんでもない!莉奈ちゃんみたいな妹ができて嬉しいよ。それに兄妹になるんだし敬語はやめないか?なんかこっちが気まずくなるから。僕こそ不肖の兄かもしれないけどよろしくな」
僕のその言葉に莉奈ちゃんは「大和お兄ちゃん、よろしくね!」と笑顔で反応していた。
◇ ◇ ◇
数日後、父さんと真莉子さんは婚姻届を正式に提出した。お互い再婚なので挙式はやらないらしい。
そして父さんの実家はこれ以上人は住めないという理由で、僕たち5人は近所に引っ越すことになった。しかし真綾は僕一家が引っ越すことに最後まで反対していた。方角は逆だけど、同じ最寄駅なんだから通学くらいは付き合ってやるのに。というか誰のために15年前、爺ちゃんの家を増築したんだよ。当時のことは知らないけど。あと言っておくけど、これ以上は増築できないよ。で、結局真綾はその通学に毎日付き合うという条件で僕一家の引っ越しを承諾したけど。
新しい住居は築20年、4LDKの一戸建てだった。間取り図が書かれたチラシには父さんのメモが書かれていた。メモによると、1階の8畳の和室は父さんの書斎と両親の寝室となり、2階の洋室3つは北側の1室が僕、そして南側の2室は美穂姉と莉奈ちゃんがそれぞれ使うことになった。
そして引っ越しが完了し、僕達はこの家で暮らすことになった。しかし僕の部屋には大量のダンボール箱がある。そしてタンスと本棚の中は空っぽだ。僕はこれからこのダンボール箱の中の荷物を出さなければならない。これは美穂姉や莉奈も同じらしい。とりあえず必要な奴だけ順番に出して、あとはダンボール箱に詰めて押し入れに閉まおう。
引っ越しが完了したのが夜だったため、当日は必要な着替えだけダンボール箱から出して寝た。そして翌朝、ダンボール箱から荷物を出す作業が始まった。まずは衣服類をタンスの中に入れる。それは昨日から徐々に出していたので大したことはなく、すべてタンスの中に入れることができた。そしてフィギュアとぬいぐるみとポスター。ポスターはベッド周辺に貼れるだけ貼った。莉奈ちゃんや莉奈ちゃんが声を当てていたキャラクターのポスターが大半を占めているのは仕方がない。フィギュアとぬいぐるみもベッドの上に置けるだけ置いた。そして余ったものは、ダンボール箱にまとめて、押し入れの中に閉まった。
そして昼食後、問題の書籍・CD・DVD類に手をつける。教科書や参考書は勉強机の本棚にまとめたので問題はなかったのだが、問題は本棚に入れる漫画、ラノベ、ゲームソフト、CD、DVD、BDの数だった。本棚は漫画だけで埋まり、ラノベ、ゲームソフト、CD、DVD、BDは仕方なくダンボール箱にまとめて、押し入れの中に閉まった。ただし莉奈ちゃんが歌っているCDや出ているDVD、BDは一部のゲームソフトとともに、テレビの下の棚に入れた。
こうして夕方まで部屋の整理が続いたのであった。しかし、大量の妹関係のグッズを自室に飾ってる兄って・・・元々ファンなんだから仕方ないんだけどね。
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