ペットの葬儀

動物は死ぬ。

どんなに獣医療が発達したとしても、これは避けられない運命である。


動物病院で勤めていると、多くの動物達の死の瞬間に立ち会う事になる。

共に暮らした動物との死別が、どれほど深い悲しみなのかは、ここで説明するまでもないだろう。

動物と暮らした事のある人であれば、言葉にしなくてもわかるはずの事だから。


中には「ペットロス」になって、苦しむ人もいる。

だが、ペットロスに陥られないために、行える事があるのだ。


それは葬儀である。

亡くなった動物を心を込めて弔う事で、前を向ける人がいる。

実際に動物の葬儀を行った方が、ペットロスになりにくいというデータもある。


今回はペット専門の葬儀会社を営む男性を紹介したい。


彼は元は人間の葬儀会社に勤務していた。

そこでは、ペットの葬儀も請け負っていたが、その仕事はあまりに雑で、ペットには「死の尊厳」が与えられていない現実に直面した。


彼は会社を辞め、ペットの葬儀に特化した葬儀会社を立ち上げた。


彼は動物も家族同様とし、人間と同じように家族にお別れの場を提供する。

悔いのないよう、充分に弔えるように。

彼の仕事は、とにかく丁寧だ。

遺族に寄り添い、亡くなった動物を大切に扱う。


彼は動物が好きなのだ。

彼の3匹の愛犬は、みんな保護犬だ。

それぞれ病気や障害がある事を承知で引き取った。


誰よりも動物が好きな彼が、最も悲しい場面に立ち会う事を仕事としている。

それは、共に暮らした動物を亡くした時の気持ちが、誰よりも理解できるからだろう。


ちなみに、彼は前話に登場した公務員のA獣医師と顔見知りだ。

彼の愛犬達は、A獣医師を介して引き取った犬達なのである。

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