死なせた患者
とある高名な獣医師の講演を聴きに行った。
その先生にしか出来ない手術、その先生にしか治せない病気が多数あり、先生を最後の希望と頼って、患者と飼い主が集まってくる。
そんな獣医師の講演だった。
講演の内容は、多数いる彼の救った患者達の話ではなかった。
力及ばずに、亡くなった患者達の話だった。
難しい状態の患者を数多く診てきたという事は、亡くした患者も多いという事。
「獣医師なら、死なせた患者を糧にして、前に進みなさい」
そう語る彼の言葉は、何よりも重く響いた。
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