終わりと旅立ち

全身の激痛と地面との激突の寸前に麗子をかばって背中から落ちてかなり深く刺さりきったせいでいつもより体がだるい。

体に刺さったナイフを隠す為に上着を着てカモフラージュしまた目覚めたら矛先を向けかねない麗子を手錠付きでパトカー後部座席に乗せ自分も運転席に乗り糸一本で意識を繋げ保ったままほとんどふらふら状態で車を運転していた。

十分ほど走った頃だろうかさっきのどんちゃん騒ぎのおかげで検問が出来ていた。

もちろん絶賛ふらふら運転の為とパトカーの為一旦は止められた。

俺と麗子の警察手帳を見せ怪しまれない程度の情報提供をした。

「犯人は消えた」と嘘混じりの苦し紛れの言い訳を。

「一つ頼みがあるんだが」

「なんでしょう」、と一人の男性警官が近づいて来てくれた。

「これ抜いて貰えるか」

背中を見せた、多分刃の部分は体を突き抜けているから柄の部分も刺さってるんじゃないだろうかかなりの高さから落ちたはっきり言って生きてる方がおかしいのだ。

「これは、一体」

「さっき通り魔に刺されちゃってささらにそこに車で後ろから突っ込まれちゃってさ深く刺さって自分じゃ抜けないんだよね」

「はあ、それでは」

警官が力を入れて抜くとあっさり抜けた、ナイフは真っ赤だったが。

手袋を付けナイフを持つと血でわかりにくかったが魔術系統の魔法式が組み込まれていた、一般人ではわからない自分でも見逃しそうな程の術式だった。

麗子や栄介が魔法を使えるわけはない、なら1度死んだリキッドやマイケルなら話は別かもしれない、または二人を生き返らせた他の誰かという可能性も捨てきれなくはないのだが。

「麗子をここに置いていってもいいか?これから用事があってはっきり言うと麗子は邪魔なんだよな」

任せてください、という警官に麗子を任せパトカーに乗り込み車を出した、あのナイフに刻まれていた術式は知識があれば誰でも出来る再生能力低下の簡単なものだった、魔術師にも微弱にしか感じ取れない術式ということはそれほどまでに技術力のある者が禁忌術である死者蘇生術が使えるレベルの魔術師がいるかそれともやつらもサイボーグでどこかで覚えた浅知恵の魔法か。

出来る物なら後者であると願いたい死者蘇生だった場合ゾンビになってない時点でそれだけの技術があるということだから。

「しょーがない貸しを作ることになるけどあいつを助っ人で呼ぶか」


-その日の日付変更時刻-

夜の人気の無い倉庫街で待っていると1台のジープがやってきた、間違いない俺がこれから貸しを作る相手だった。

「久しぶりだな菜っ葉」

「フン、お前から仕事の依頼とはどういう風の吹き回しだ?」

巨漢でハゲでサングラス元傭兵、そして元同業者、一部の殺し屋の中では『このハゲ危険につき相手にするな』という顔写真付きの情報が24時間回り続けるレベルだ。

「今はだいぶ治ってきたけどなさっきまで死神に鎌かけられた状態近かったんだよ、猫の手も借りたいってくらい窮地に立たされててね、あ、お前猫ダメなんだっけ」

おまけに唯一の弱点が猫と女、猫は見るだけでダメで女は触られたらゆでだこになるくらい苦手、というか慣れていないらしい。

「どうせお前のことだ半分近くは女がらみだろう」

「正解だ、俺も甘いよな刺された女かばってビルの屋上から落ちるんだもん。

まーおれはお前と違って依頼主の人命第一だからしょーがないけど」

ビルから真っ逆さまに落ちて意識を失うだけで済んだ麗子とナイフを刺されて全身強打した俺の差はなんなんだろう、ボディーガードとガード対象の差くらいだろうか。

「こういう時女への甘さが弱点だって事を酷く痛感させられるよ身をもって味わったよ」

「身をもって味わった所でお前は学習しないだろう、学習してなんになるかわわからないけどな」

「女、子供は殺さないし手も上げない死ぬのは男だけで良いはずだいまはまだ、な」

乗れ、と言われ菜っ葉のジープに乗った行き先はただ一つリキッドとマイケルのいる場所ここから2ブロックしか離れていない場所だったが。

菜っ葉の通常というかいつもの装備はM134ガトリング、M60軽機関銃、レ・マット・リボルバーを使っている命中率は眼中にないらしく命中率<火力(<の使い方間違ってないよね)らしい。

「俺の報酬はいくらだ」

「全部やるよ、ワンコインだけどな」

指をはじいて五百円玉を菜っ葉へ弾き飛ばした。

「こんな金額で仕事ができるか!一体依頼主は誰なんだ」

ごもっとも。

「後で百万ばかし振り込んどいてやるよ、依頼主は俺を刺して屋上から一緒に落ちた女だよ、とんだ貧乏クジだ」

半分は自分自身の今までの仕事の後処理の悪さの問題だから自己責任だろうか、これから恨みの持つ人間はしっかり蘇生されないよう青い炎に買えてしまおう。(このネタがわからない人は三話へどうぞ)

ジープを降りると待ち構えていたかのようにマイケルが立っていた。

「菜っ葉、こいつ任せるわ、雑魚処理はお前の超得意分野だったろ」

「あぁ、任せろ大得意だ」

超火力の雑魚処理担当命中率はもちろん皆無。1度勝った相手は雑魚です。(RPGのボスも同じ)

マイケルを菜っ葉に任せ奥の倉庫に入るとマイケル同様に待ち構えていたかのようにリキッドが立っていた。

右手にM82A2を取り出し右腕で構えた、さっさと帰りたいはっきり言ってリキッドも雑魚枠だから。

引き金に指をかけると突然四方八方からライトが照らされた。

「まぁ、二度目はそんな簡単に終わるわけ無いよな」

ギュイーンという、回転音がライトの方向から聞こえてきたはっきり言って嫌な予感しかしない。

脳裏を『死』という言葉がよぎった。

「久しぶりだな兄弟」

「本当に兄弟だって思ってるなら四方八方から向いてる機銃を向けないでくれるか?」

「ワンモーションでも起こしたら蜂の巣にしよう」

「それで俺を脅したつもりか?兄弟」

ワンモーションそんなものはいらない、しっかり保険は掛けるだけ掛けた。

得意の氷魔法で分厚い壁を作り俺とリキッドの空間外からの邪魔が入らないようにした。

「また、殴り合いでもするか?」

「それも面白い、だが貴様には私を殺して貰いたい」

「はぁ?」

「それで私もあいつも生という呪縛から解き放たれるのだ」

「悔いは残らないのか?」

「あぁ、私には家族も愛した者もいないからな。

死ぬ前に一つだけ助言をしておこう。

『君は首を突っ込んではいけない事に首を突っ込んだ結果はどうあれ自分は傷つき最終的には大切な人を失うだろう』」

正直言ってうらやましかった、俺は目的もなくただ『生きる』という呪いに掛けられているような状態だから。

全てをやりきった人間はきっといまのリキッドのように笑顔で自分の死を受け入れられるのだろう。

それはきっと俺にはいつまで経っても理解できないしわかることでもないのかも知れない。

いつまでも構えていたM82A2の引き金に再び俺は指を掛けた、今回の事ははっきり言って中身は薄っぺらかった(決して小説のないようのことではないですないんですよ!?)俺がこのくだらない戦いに終止符を撃つその思いだけが力になり気がつけば引き金は引かれリキッド側の氷壁は血で染まっていた。

俺はただ最後までリキッドの助言の意味がわからなかった、わからないままだった。



-それから八時間後-

宿泊所に着いた瞬間風のようにやってきた唯に部屋まで連行されそのまま昼までの四時間ぶっ続けで怒られた。

(あくまでも余談)


-次の日-

当日学校に着くと同時に校長の代わりを務めている教頭に辞表を出した。

「依頼主が死んだなら俺にもう仕事をする義理はないだから今日限りで辞める」と。

その日は朝から朝礼があり壇上に上がって話す機会が出来た、思惑通りこれで今回の件の黒幕がわかる。

壇上に立ちある程度の挨拶を済ませると突然AKを持った二人組が現れた。

正体は先日助けたニット帽の男とロン毛の男自分の中でこれが一番手っ取り早い方法だと思った。

コルトガバメント(M1911)を取り出し1発天井に向けて発砲し壇上の上の台を蹴り飛ばした。

「生徒には悪いけど全員人質になってもらう、あんたらの口を割らせるためにな」

教員席に銃を向けた黒幕がいるなら必ずこちら側の人間だ、そうでなければつじつまが合わない。

生徒側には一切の利益はないはずだから。

「全て話して貰う、なにもかもをな」

「わかった、私が話そう」

そう言って口を開いたのは今は校長の代理をしている教頭、その人だった。

「これまでに自殺として発表されていた三名の生徒は全て保険金目的の殺人だ。

この学校の元校長は操り人形だったんだ校長の他にこの学校を運営している人間がいる、そいつは警察関係にも顔が利くらしい世界中の全員が自殺だと信じ真実を知っているのは一部の人間だけ口外しようものなら殺される。

私もいつかは殺されるだろうその前に伝えるべき人間に伝えなければならなかった」

「今しゃべったってことはここにいる全員やばいって事じゃないのか」

「それは大丈夫だ君のようにレコーダーで撮っていない限り記憶を消されるだけで済む、流石にここにいる全員を殺すなどという目立つ行動はしないはずだ」

「じゃあ、いまここで起きたこと全てには見えて、聞こえてるって訳か」

「彼は監視下に置いた人間の五感を感じ取れるらしい、陰口から行動、喋ったことすべて。

そしてその感覚は奪ったり機能を改善したりもできるらしい、もっとも監視下に置 くには特別な儀式を行うしかないようだが」

つまりは魔法の一種だろうやはりあの二人は蘇生された可能性が高いここにいる教員を監視下に置いているの仕組んだ事だろう、厄介という点では気にはならないが面倒という点では気になるを通り過ぎてなんでこんなに人に狙われる人生なんだと呆れてしまう。

「ならそいつの顔を教えろその儀式とやらをするときに会っただろう」

「目隠しをされて見ることは出来なかった、わかったのは変わった声をしていたということだけだ」

「そうかならここからはさっさと退散させてもらう、それとに伝えておけ何か問題があればこのボイスレコーダーを世界中にばらまいてやるってな」

そういい二人と共にその場から去った多分俺はリキッドの助言の意味が少しだけ理解できたのかもしれない、ただいまのまま唯と一緒にいたら唯を失う気がした。

いまのままではミスティやアリスすら守れないのかもしれないリキッドの言っていた『結果はどうあれ最終的には大切な人を失うだろう』と言う言葉の意味はきっとそういうことなのかもしれない。



-その日の夜-

「二人に大事な話があるんだ」

そう言って話を切り出したのは夕飯後ミスティの入れた食後の紅茶を飲んでいるときだった。

「どうしたんですか?そんなに改まって」

「そうね、いつもの大輝らしくないわ」

普段ならこんなことは言わないからなのかいつもふざけているからなのか二人の返しが微妙に心をえぐってくる。

「実はしばらくの間武者修行?みたいなのに行こうと思ってて、明日から中学卒業までの間師匠に顔合わせにいこうかなって思ってたんだ」

はっきり言って本当の目的は魔法学校に行くことだった俺やミスティ以外のアマルガムについてそして錬金術とその他の魔法を覚えるためにも。

「私は大輝さんが決めたことならいいですけど、それに私達に許可を取るような事でも無いですよね?」

「いや、元々許可は取るつもりなんか無かったけど一応伝えておくだけ伝えておかなくちゃならないと思ってね」

あのクソ師匠からは月影流の剣技全てを奪い取ってやる、と意気込んではいたが冷静に分析するとその為には少なくとも一年以上の年月が掛かると判断したもともと一刀両断を覚えるだけでも幼少期の頃は半年かかったくらいなんだから半生くらいつぎ込まないとダメな気がしなくもないのだが。

「私も別に平気よ私達が狙われる事なんてないものね」

「ありがとう、二人とも」

はっきり言ってだが、俺が国外に行っていたとしても二人が人質として拉致誘拐される可能性は否定できないのだが。


次の日の深夜に家を出た心配そうな表情のミスティと無理をしてるようにも見えるが笑顔で手を振っているアリスに見送られながら。

それからはまるで一瞬のように二年という月日が流れた、とうとう俺は約束の『中学卒業まで』には帰れなかった。

その日にしっかり帰っていれば本当に大切な物を失うことは、避けられたのかもしれなかったのに。



-あとがき-

今回は中学生編のラストとなります。

次回はサブタイトルに何々編と入れて投稿させて貰います。

次回からは未来編を投稿させていただこうと思っています、いままで見たことなかった人も未来編のみとはなりますが新しい主人公を出すのでそこからみてくださったら嬉しいです。

未来編投稿後辺りから多分かなり自由な投稿になるかもしれません(別作品更新するとかそういう話ではない(笑))話が間に合えば別作品の方で投稿できなかったハロウィン編の代わりにクリスマス特別編:年越し編:期間が空いてバレンタインストーリーを書かせていただこうとおもいます。

お楽しみにぃ!

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