第一節:柊哲という名の殺し屋

はじまりの時



日本のとある中学校、そこに俺は通っている、理由は特にないが友達はいない、作ろうともしなかったし、小学校時代からも同じようなものだった。


自分の席に着くと、なぜか教室がいつもよりがやがやと騒がしかった。


「なあなあ聞いたか? 今日転校生が来るらしいぞ?」

「まじかどんなやつだった? 女か男か?」


二人の男子学生近くで、しかも、大声で話していた。


「女らしいぜ、なんか留学生だって言ってた気がするぜ?」

「留学生? こんな田舎の学校におかしくないか?」


そーだよなー、と男子生徒二人は話していた、すると男子生徒の一人が。


「お前は興味ないの転校生だぞ! 転校生」


と、俺に聞いてきた、はっきりい言って興味はない、返答するのもめんどくさいくらいだ。

まぁ、そこを噛み砕いてしょうがなく返答した、心のこもっていないただ一言だった。

「ごめん、そういうのあんまり興味ないから」

多分、返答にはあまり期待していなかったのだろう、俺と同じく一言で帰ってきた。


「あいかわらず冷めてるなお前」


余計なお世話だ、とは言わないようにしているが、今回は言いそうになってしまった。


それから十分ほどしただろうか、担任の教師が教室に入ってきた、いつもなら出席簿だけなのだが今日は後ろにさっき話していたであろう、留学生らしき人物がいた、はっきり言って『綺麗』という言葉しか出てこなかった。


「今日から君たちと一緒にこの教室で学ぶ新しい生徒を紹介します、さぁ自己紹介して」


紹介するといいながら、本人に任せるスタイルの先生かっこいいー。


「今日からお世話になります、アリス・カラミティと言います。よろしくお願いします」


日本語ペラペラじゃないか誰もがそう思うだろう。

別に日本に来る前に勉強していたのだとしたら、違和感ないだろう・・・多分。


「とりあえず席に座ってくれ、席は窓際の一番後ろだ」


転校生の話を聞いた時に嫌な予感がしていた、普段は自由席だが全部席は二つになっている、しかも俺の隣は空席(親しい知り合いがいないから)。

つまり転校の席は決まっている俺の隣だ、人と関わりたくない、今日は良くてもこれからは、いや、よくないな。

どうしようか考えている最中転校生であるアリスは俺の隣の席に座った。


「よろしくね」


その言葉は無視した、完全に聞こえてないふりをした。

出席を取り終わり、一限目の開始のタイミングで仕掛けた。


「先生、今日は体調が優れないので帰宅します、それでは」

「あ、おいまて」


素早く帰宅した、先生にも追いつかれない速さで。

自分以外、誰も住んでいないはずの家に帰ると鍵が掛かっていなかった、おかしい家を出るときに鍵は掛けたはずなのだが。

家に入ると見慣れた女性がいた。

笠霧すずねさん二十八歳、初見ほめ言葉は「年齢より若く見えますね」、だ。

俺の住んでる家の管理人、一軒家で管理人はおかしいけど、子供に管理を任せるわけにはいかない、というすずねさんの方針だったからしょうがない。


「あれ? 帰ってくるの早いね」

「サボって来たんで」


あらまー、とすずねさんは反応していた、問題は無い成績には関わらない。


「あー、そう言えば言い忘れてたんだけど、今日から新しい同居人がくるわ」

「ヘー、名前は?」


『管理人』と言うのはこの一軒家元々は俺の両親の持ち家は今はシェアハウスとして使われている、その管理人がすずねさんなのだ、シェアハウスをやっている理由は、金が稼げるからだ。


「意外に興味あるの?」

「そんなんじゃないですよ、ただ一緒に住むなら嫌でも顔を見ることになるでしょ? だから少しは知っておかないと」


軽い言い訳も含めて、理由を話した、若干、嫌な予感がしなくもないのだが。


「後であなたに迎えに行かせようと思ってたの、詳しくはその時本人に聞きなさいよ、あと神城さんが呼んでたわよ、帰ってきたら来いって」

「じゃあ、今から行ってきますね。新しい同居人とは何時にどこで?」


行かないとダメそうなので、場所と時間を聞いておく。


「四時に図書館ですって、目印はピンクのストラップらしいわ」

「分かりました、五時前には帰ってきます」


そう言って服を着替えて家を出た。

家を出て歩いて十分程、その場所にに神城さんは住んでいる。


「神城さーん来ましたよー」


玄関から入り地下にある部屋へ向かった。

神城恭介、三十二歳ビジネスパートナーなのだが報酬の取り分は神城さんのほうが多いすずねさんとはいわく付きらしい。


「仕事ですか?」

「あぁ、まずそうじゃなかったら呼ばないからな」


そうですよね、意外とひどいこと言うのよね、この人。


「内容は?」

「海外からの依頼だ、金持ちのおっさんが娘の護衛を頼みたいそうだ」


朝の一件から、女がらみはいやな予感しかしない。


「金持ち、うーん期間は?」

「一年だ報酬は百五十万だ」


一年で収支百五十万は、日給的に考えても『赤字』だろうが。


「もちろんおことわ・」

「安心しろ、お前の意見聞く前に受けたから」


うん、知ってたでもね、パートナーなら一言くらい言ってから受けようよ。


「で、護衛対象の名前と写真は?」


もう文句しか出てこないが、ぐっとこらえて仕事の話。


「これが写真、名前はアリス何とかって言ってたなー」

「あ、今日のいやな予感一つ目的中したかも」

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