赤(改)

 沢の水は冷たく澄んで、底には水草がゆらゆらと泳いでいた。よく熟れたトマトをかごに入れて沈めていると、すり減ったビーチサンダルを履いたアキラが寄ってきた。動物みたいな敏捷さでトマトをひとつ掠める。それもいっとう美味しそうなやつを。

「それ、まだ冷えてない」

「構わねえよ」

 私の嘆息はきかなかったように言って、歯を立てる。皮がやぶけて、陽に焼けた彼の腕を汁がつたう。真夏の畑の青臭さを感じた気がして、思わず目を伏せる。沢の水がトマトの輪郭をゆらめかせていた。

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