第二章4敵は味方
『じゃ、結果発表しまーす』
個室にて結果が発表されるみたいだ。にしても、ここの居心地は悪い。
カメラが四方八方に設置され、完全に監視されている。
監視してる人が複数人いるんだろうか。
『ダーク・ゴッドチームの勝ちデース』
いや、まあ嬉しいが、声がウザい。
傍観者みたいで、俺達は一つの駒の様に思えてくる。この声何様だよ。
ん?個室にある机の上に紙が出てきた。
この運営してる奴紙好きだな……と思いながら、その紙を見る。
______
第一回
エル・クラス co赤 投票白
セータン co黒 投票黒
ダーク・ゴッドco黒 投票黒
世界最強の俺にひれ伏せろco白 投票 赤
エリーco赤 投票黒
武田蘭co赤 投票白
______
これが結果か。
ま、次勝てば俺らの勝ちなんだよな。
『メリージュ様 お辞めください!!』
『何を……離してください!』
『やめろお前ら!!』
何やら声が喧嘩している。
メリージュという単語を俺は聞き逃さなかった。メリージュはこの声の主と仲間なのか?
色々考えるが、俺達に今発言権はなく、声を出したくても出せない。
『中止しろ』
『で、ですが……』
『お、仰せのままに』
(第二回戦 中断します)
このアナウンスにツッコみを入れる余地もなく転移した。
公園にて
相手チームの3名と俺達のチームがここに転移する。
「しゃーーっほほほほーーーくそだろ!!」
エル・クラスが珍しく激怒している。その気持ちは俺も痛いほど分かるのだが、仕方がない。
「あれ?」
メリージュがあの声の主と何をしていたのかを考える故に、周りを見回すとショコラの姿が無かった。
「うむ」
セータンも気付いているのか分からないが、頷いた。にしても相手チームと自由の効いた同じ空間に居るのはちょっと不気味だ。
「ショコラ居なくね?」
「やはりダークも気付いてたか」
俺が問うとセータンが同意した。やはり気付いていたんだ。
「あんな奴ほっとけ」
少し低めの声の女性の声、聞き覚えがあまり無い武田蘭が不貞腐れながら興味無さげに言った。能力者は他人に無関心すぎる。
「あんな奴って? 何でそんな言い方するんだ」
「あいつはな……」
武田蘭が話を始めようとしたその時、俺は誰かに手を掴まれ、何処かへ連れていかれそうになる。
「お、おい!誰だ!」
「私よ 少し来て」
セドラが俯き加減でそう言うと、黙って俺を河川敷まで連れていった。
「なんだ?」
俺は何故この河川敷に連れてこられたのか分からない。流れる川、反射する太陽。そして草木が揺れる音……
「どうして?」
俺が聞きたいのに聞き返される。『どうして?』とは何だ。少し返す言葉を探る。セドラは少し口角を上げた様に見えた。
「並行世界でも愛するって……」
口角を少しだけ上げたのは笑顔と言う意味では無いと俺は察した。その声は震えていた。
「……セドラだけが好きってダークは私に言い残したんだよ」
「え?」
俺はそう返すのがやっとだった。
彼女に何を言って良いのか分からない。もし仮に並行世界が存在し、そこでセドラと俺が付き合っていたのなら無責任な言葉はかけれない。
セドラは俺に携帯電話の様な物を渡してきた。スマホなのだが、画面がデュアルタイプになっている。
電源が自動的に付くと、待受画面が浮かび上がる。そこには、少しシュッとしてオシャレな服装を身にまとった俺とセドラが写っていた。
「私はどんなダークでも受け入れるよ」
この写真を見てからだと、セドラの気持ちを考えるだけで胸が締め付けられる。
「ダーク!」
俺を呼ぶ聞き慣れた声が遠くから聞こえた。
「ふふ、ダーク セータンの所へ行っておいで」
セドラは俺に笑顔で応えた。
その笑顔は美しく、完全に俺のタイプだと確信した。河川敷の向かい側ではセータンが居て、橋を渡って向かってきている。
「おう!」
俺はセータンの方へ走る。少しの時間、セータンと離れてると落ち着かなくなるのだ。
橋の上で俺とセータンは合流し、手を握る。
「セドラ 公園戻ろうぜー!」
俺は橋の上から大きな声を張り上げ、セドラに伝えた。セドラは公園の方角へ歩いて行き、俺達も公園に向かった。
(うふふ……)
メリージュの声がする、けどメリージュは何処にも居ない。幻聴なのか……?
そこから聞こえる事は無かった。
公園へ着くと相手チームとエル・クラスが綺麗に並んで倒れていた。
セドラとセータンが様子を伺いに行く。俺もそれに続き、倒れてる4人の方へ向かった。
「大丈夫?」
セドラの優しい囁きがする。最初キスしてきた時の印象とは全く違い、俺は少しセドラが気になっている。
「うーーーーーぁぁぁーっしょおおおい!!」
エル・クラスがセドラの声に反応し、セドラに飛び付いた。まるで異性に飢えすぎてどうにかなった人の様。
「セドラァァァァア!!」
「や……」
完全にセクハラと言うか、見るに耐えない光景だ。
「エル・クラスやめろぉぉぉぉお!!」
胸の奥で少し嫉妬心を抱いてしまっている気持ちを押し殺しながらセドラとエル・クラスを引き離した。
「ダーク セドラの方が好きな……」
「いや!俺はセータン一筋だぜ!?だけどよ!今セドラ嫌がってただろ!?ひ、人として止めたんだ!!」
確かにセドラは俺の中で超ドンピシャのタイプだ。
水色のサラサラな髪をしたショートヘアで胸が丁度いい大きさ。セータンとほぼ同じだろうか。更に目はキラキラしていて大きく、身長は俺より少し低め。顔が整っているが、フワフワした可愛さがある。
「うぅぅ……」
「セータン、あの、怒ってる……?」
「我以外の異性に優しくするな」
21年間モテた経験が無く、いやそれ以前に人と話す機会も全く持って無かった俺にこんな言葉を掛けてくれるセータンを俺は大切にしなければならない。それ以前に俺はセータンを愛している。
「あぁ!」
セドラは優しく微笑んでいる。
ーーーーその時だった。
(ふふふふふ……あははははははぁあはぁ……)
俺の頭の中で何かが叫んだ。笑い声なのか何なのかは分からない。金縛りにあっている感覚に陥り、俺は何も出来ない。思考回路が働いていない。
(……うふふふふ……殺すよふふふふ)
漸く声が収まった。
最後、ハッキリとは聞こえなかったが、『殺すよ』と聞こえた気がする。声はメリージュに似ていた。
少し落ち着きを取り戻し、周囲に目をやるとそこにはメリージュとショコラが立っていた。
「一旦死んでもらいますね」
「せやなぁ」
メリージュは小さな杖を右手に持ち、左手には分厚い本を手にしている。
ショコラは日本刀を2本持ち構えていた。
「セータン……」
セータンが呟いているが、先程の幻聴で俺は聞き取れない。
「……絶対阻止する」
セータンが何を言っているのかは分からないが、その目は、その立ち姿は狂気を放ち、覇気があった。
セータンがセータンで無いような……そんな気がした。
「ショコラ、やってしまいなさい」
「任せとけ」
ショコラがセータンに襲いかかる。
また公園が戦場と化した。
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