第二章 2契約を交わす
公園に着いた俺達。
夕日が沈み、辺りが暗くなっていた。
「っっっしょーーーーーい!!」
「決まりでいいわね」
「やな」
公園に残っていた3人は何やら話し合っている様だ。
「戻ったぞ セータンも一緒だ」
「う、うむ……」
俺達は3人の元へ戻ったのだが、何やら鈍い。行方不明になったチームメイトが戻ってきたのに興味が無い無関心の様に思える。先程、俺と口付けを交わしたセドラでさえも俺達に目を合わせない。
「あ、あの」
俺が声を掛けるも、返事が返ってこない。
俺とせータンは見えない存在になったのか?まさか、死んだ……?!
確かに、映画館で受付の女性があんな映画を見せてくる時点で可笑しかった。
「ダーク……」
聞き慣れた声だ。
隣で立っているセータンがつぶらな瞳で俺を呼ぶ。
「我々は……」
さっき見た映画の映像が俺の脳に叩き込まれている。集中力が欠けてきている状態だ。
「……シカトされている」
そのセータンの言葉に絶句した。
確かに、俺は死んだ覚えがない、強いて言うなら夢かも知れない……けど、夢なら醒めるはずだ。そもそも俺は夢の中で夢と自覚しない。
バイト休憩中の睡眠以外は。
俺達がこの状況で無視されるという事は、二回戦に出してもらえないかも知れないという事を意味していた。
「どうする?」
「うーん、少し心外だな」
次の二回戦は3人戦だ。
つまり2名は補欠になる事になる。
「何焦ってんだよぉぉぉおお!!しょーーい!!」
エル・クラスが突然俺達に絡んできた。
セータンは警戒をしている様子。明らかに絡み方が可笑しい。
いや、エル・クラスは最初から可笑しい奴だが……
「おかえり ダークくんっ!」
「……」
セドラが馴れ馴れしく俺を迎える。が、セータンを出迎えはしなかった。ショコラは罪悪感があるのか顔が強ばっている。
…………さっきと人が違う
いや、人格は全く変わってない。性格も同じだ。しかし思考や心理面でこの3人は変わってる。それは俺にも感じられた。
「何のつもり?」
「何が?」
セータンが問いかけるが、三人は白を切る。
そもそも、メリージュが消えた件。これを予測して、セータンが帰ってくるのも分かっていた……?
「ダーク、手繋いで」
「ん?あ、おう」
この状況で手を繋ぐ事を要求してくるセータン。確かに、手は繋いでいなかったが……
そう考えながらも、俺はセータンの手を握る。
「転移……エリアA」
「おわっっ!」
セータンがそう唱えると、俺は消えた。
いや、転移している、と言うべきだろうか?しかし、地面が無い。足がつかない……
目をそっと開けると、真っ暗な空間に微かな光が天から出ている何も無い空間にいた。
いや、今俺が居る場所に天や地があるのだろうか?
「ダーク まだ離さないで」
「え、あ、ああ!」
俺はセータンと手を繋いでいた。
これを離すと命の危機に晒される気が本能的に感じる。
「ここは……?」
俺が聞いている間に足に感触が来た。
地面についた様だ。相変わらず何も無い空間。牢獄の中よりも酷い場所だ。
「聞いて ここは誰も来れない 我とセータン以外は そこにダークも呼んだんだが……」
今、我とセータンって言わなかったか?セータンが二人いる……?
聞きたいことはあったが、あのセータンが珍しく真剣だ。セータンは話を続ける。
「……メリージュとショコラはグルだ セドラはまだ精査不足だけど、この闘い嫌な予感がするの」
「嫌な予感……?グル?」
「メリージュが消えた時の反応覚えてる?ショコラは何も触れなかった セドラも触れていない エル・クラスは失神してたから謎だが」
メリージュが消えた時、俺以外触れなかった事を俺は鮮明に覚えている。いや、と言うより全員が何かしらのアクションを起こしていた。それはセータンも同様に。
「今、公園にいた3人は人が違ってた」
「あぁ、それは俺も感じた」
セータンも感じていたようだ。まるで敵チーム、いや、それ以上の物があると暗黙のうちに理解した。
「時期殺される」
またセータンの言葉で俺の血の気が引いた。
あの場には、メリージュがウムガルナを倒した時と同じ空気感があったからリアルに感じた。
「俺はどうすればいい」
俺は無力だ。何も出来ない……毎日バイトの休憩中ならまだしも、普段俺は催眠術しか出来ない。
「我と契約してもらうわ」
「契約……?」
そう俺が聞き返すとセータンの様子が変わった。暗い空間でも少し恥じらいを見せているのが伝わってきた。
「うぅ……あの、け、け……」
呂律があまり回っていない。セータンはあがり症な一面があり、俺にとっては日常的な光景だ。
「……っっこん しし、してもら……」
「え!?」
俺は事態の収集が追いついていない。
「え!?」
俺は続けて聞き返してしまった。二度見ならぬ二度聞きの様なものだろうか。
「結婚の契約をしてもらう」
今度はハッキリと聞こえた。
困惑するが、セータンは本気だと言うことがすぐに分かる。
「理由があるんだ」
「ん?」
少し天井からの光が強くなってくる。
眩しいぐらいで燦爛たる。
「じ、時間が迫ってるわ」
何の時間が迫っているのか俺は分からない。
しかし、それを問う事は出来なかった。
セータンは今まで以上に無いほど焦りに満ちていた。
「我と結婚契約を交わすと二人の命が共有されるの どちらか死んでも片方が生きていれば蘇生できる タイミングは今しか無い」
理由は飲めた。
今、俺は決断を迫られているが、考えている時間は無さそうだ。
「わかった 良いぜ」
俺はそう答えた。
その返答は、あまりに軽く、責任感がなかった。
「これ!ダーク!」
「おおお、あ、あっとっとっと……」
俺はセータンから投げられた指輪を薬指に付けた。これで良いのか……?と不安になりながらセータンを見ると、セータンも指輪を装着した。
「もうダメ 手繋いで!」
「え?!なんて!?」
「手!手ー!繋いでー!」
声が薄らと聞こえる。
だが、その音はどれも同じに聞こえ、何を話しているのか分からない。
セータンが俺の方へ寄ってきた。精神を追い込まれている様な、崖っぷちにいるような……そんな物を感じた。
セータンが俺の手を触った途端ーー
「あぁぁぁぁぁ!!」
目が見えない……さっきの空間で光に殺られたのだろうか。
徐々に目が慣れ、ボヤけながらも周囲が見えるようになってきた。
ここは公園か……
俺の右手には手の感触がある。セータンの手だろう……
「……っく」
何か声が聞こえる。
これもさっきの空間にいたせいなのか?鮮明には聞こえない。
「だー……」
聞こえにくい、セータンの声か?
少し怖い。閉塞感というか……世界と世界の狭間に立っている感覚だ。
「ダーク!」
「ぅ、あ、セータン」
俺の五感が治った。
そこはいつもの公園だった。
同じチームの三人は何処にも居ない事に俺は構ってれる体力が残っていない。
俺は倒れそうになっているのだが、重大で重要な事をこのタイミングで思い出した。
あ……
今日…………
夜勤だ…………
俺は若干絶望しながら倒れた。
時系列から見て、今は夜だろう……バイト詰んだ。
☆☆
我はダークの事が大好きだ。故に守りたい。
メリージュは我の推測が正しければ……
世界侵略組織〈ベータ・ノヴァ〉に関与してる。
「せーた……ん」
ダークが膝の上に頭を乗せ、寝言を呟いている。命には別状無さそうだ。
さっき、あの光はメリージュの物だった。
完全に監視されている事が今日、ハッキリと分かった。
☆☆
俺はバイトを休んだ。
今までで初めてだ……。
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