第一章 12ベータ・ノヴァ

 


(副将戦開始致します リングへお上がり下さい)




 ☆☆





 私は世界を裏切る。

 目の前に居るウムガルナ。

 彼女を味方だと思った事は今まで一度も無い。

 こいつを殺し、世界は私、一人の手に……

 美しいですわね。


「殺しますよ」

「あらあら、頼みました」


 少し勘違いしているらしい。

 私は、今ダークやセータンを殺しはしない。


「リングに上がりましょう」


 私はウムガルナをリング上へ誘導する。


「ええ」


 私が何故この密室に戦闘フィールドを作ったか。そして何故ウムガルナ自身でダーク達を殺さないのか……


 それはウムガルナの能力が空気抵抗によって重力を操るというものだから。

 今の彼女は無力に近い。




(副将戦 開始致します)



「闇よ……我が闇よ……フラッシュ・エデン!!」


 ウムガルナの五感を奪った。


「な、何をしている!?」

「貴方を殺します」

「お、おい!?」


 当然、ウムガルナには届かぬ声だ。

 実は私は世界征服組織〈ベータ・ノヴァ〉幹部。

 ウムガルナも同様に幹部だ。

 私はより強い相手を私の手で殺す事が快感……

 だから、今この場にいる能力者は殺さない。


 ウムガルナ以外は……



「呪詛します 寂滅しろ」


 ウムガルナの臓器機能が一瞬にして停止する。


(副将戦 勝者メリージュ)



 私は強いが故に弱い。

 敵が相手にならない……

 から、相手が強くなるまで育てている。


 血が好きだ……

 黒くドロドロした血……

 はぁぁ……美しい……


 〈説明しろ〉


 あ、リーダーですわ……


 〈何をしている!!〉


 貧弱すぎる弱者は面白くないですね。


 〈本部に帰還せよ〉

『承知しました』


 まだこの組織の幹部として楽しみたい……

 いずれは組織、全世界ごと私が乗っ取る……



「おーい?」


 ダーク・ゴッドから声を掛けられる。

 所詮人間が私にタメ口など。


「はい……人を殺してしまいました……私は人間失格です 私を殺してください……」


「仕方ないよ 勝ってくれてありがとうな」


 上から目線……気に食いません。


「……ありがとうございます」






 ☆☆





 メリージュが勝ったが、敵チームのウムガルナが死亡した。

 俺達チームは勿論、相手チームも動揺している。

 人の死を初めて目にした。


 これ、デスマッチだ……


「ダーク?しっかり」

「え、ああ」


 セータンは何も感じていないのか……?

 ん、いや。俺が勝手に勘違いしてただけで皆動揺していない……


 エル・クラスはまだ失神している。

 このメリージュの戦いは数秒で終わった。


「頑張りや」

「ん、あ、おう」


 ショコラもウムガルナの死について触れない。

 まるで俺以外のメンバーは人の死を何度も見てきたかの様だ。



(大将戦 開始致します)

「私、セドラはリタイアします」

 水色の髪をした不思議なオーラを放っている美しい少女が言った。

 ちょっとタイプだ。


(大将戦 勝者ダーク・ゴット)


 は?

 あ、いや喜ぶ盤面なのか?!


「はぁぁぁ!?戦えよ!!」

 向こうのチームで内乱の様なものが起きている。


(敗北チームのメンバーは能力剥奪します)


 一瞬すぎる。

 先鋒戦から一瞬すぎる。



「うぁぁぁぁぁ!!」


 相手チームのメンバーが消えた。

 ウムガルナの死体とセドラが何故か残っている。



「ダーク!やっと会えたね!」

「だ、だれ?」

「セドラよ」



 セドラが声をかけてきたのだが、誰だか分からねえ。

 いや、名前は分かる。

 対戦相手メンバー欄にあるからな。

 初対面なのに代わりはない。



「並行世界でダークと私は付き合っていた」

「は?」



(ご退場下さい)



「お、おい、ああぁぁぁぁー!!」




 俺は転移した。

 バイト先の裏にある公園だ。

 周りには俺のチームメンバーとセドラが居た。



「すみません 私の代わりにセドラさんをメンバーにしてください では」


 メリージュが姿を消した。


「え、ちょ……え?!は?」

「ダーク……この子誰」


 ここ20分ぐらいで色々ありすぎて頭が回らない。俺の体は一つしかねえんだ。


「え、あの、メリージュ、いやそいつは知らねえが、メリージュは?あ、とりあえず勝ったんだが……えっと」


 何から話をしていいのか分からない。

 にしてもショコラは冷静だ。


「私はセドラ 貴方の彼女よ」

「いやいや、誰だよ」


 俺は彼女いない歴=年齢だ。





 ☆☆






 うちはここまで読めてた。

 でもな……予知できるって事が知られたら……もう終わりなんや。

 次の二回戦うちは出場せん。

 何でかは分からんけど、そんな気がするねん。

 まあ、問題はそこではない。

 ダークが不審に思ってる。

 せめて、せめてメリージュが世界を征服出来る時まで……うちはセータンを護衛せなあかん。

 いや、せいなの方ではない……






 ☆☆





 上からまた紙が降ってきた。

 一枚だけだ。


「ちっ……こんなタイミングにかよ」





 ______




 やあ、我は神だ。

 第二回戦は各チーム3名のみ出場可能

 今伝える事はそれだけだ。

 先発メンバーを考えたまえ。




 ______





 みじかっ……



「思ったんだが、セドラって能力剥奪されたんだよな」

「ええ、だから私は付き合ってるの」

「は?」


 セドラの言ってる意味が分からねえ。


「うーーーーーーーっでひょぉぉぉお!!セータンの下着やべぇぇぇえええーー!!!あれ!?ここどこぉぉぉおお!?ひょーーい!!」



 間が悪すぎるタイミングでエル・クラスが起きた。


「わ、我の下着……ダークにしか見せない」

「いいっっすねぇぇえー!!ダークさーーんっっしょーーい!!」


 あー、だりぃぃぃい!!

 次から次へと……



「何の話だっけ?あ、そうだよ!メリージュどこ行ったんだ!!」

「じゃなくて、私と付き合ってる話でしょ」

「下着の話だっしょーーーい!!」

「ダークの……話だ」



 うむ。もういいや。


「……なあ、みんな そんなんやったら次負けるで」

「え?」


 ショコラが思い空気を出しながら話した。


「だよな、とりあえず3人選んだ方が良いのか」

「ならセドラを出しなさい」


 セドラは能力剥奪された癖に自信満々だ。

 何を武器に闘うつもりなんだろう。



「んっっ……」

「んぁぁ!?」



 セドラが俺にキスをしてきた。

 初キスが奪われた、俺は状況を掴めていない。



「ありがとう、これで私の能力はダークと同じ能力になったわ」

「は?え、ん!?いや、いやいや、何してんだ!?」


 セドラの思考回路が全くもって分からねえ。


「うぅ……ダーク……知らない!」

「お、おい!!?」

「セータンぁぁぁあんーーっっしょーーーおおおおい!!」


 セータンが涙を堪えながら走り去った。



 何だこれ……



「私の能力は完全に剥奪されていない」

「は?今それどころじゃねええええ!」

「キスするとその人の能力をコピー出来るアクティブスキルは健全……」


 セドラがキスをしたのは俺のスキルをコピーする為……?

 もっと強いやつのスキルコピーしろよ……と思いながら俺はセータンを追いかけた。


「はぁ……ダーク好きだよ」


 セドラが呟いた。



「チームワーク無さすぎやろ」

「そーーれーー!!なーーっしょーーい!!」







 セータン……俺にはお前が居ないとダメなんだ……

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