第一章 11 それぞれの目的
うちはこの声に耳を傾けていた。
いや、傾けるしか無かった。
『能力……あなたに授けます』
「能力?」
『ええ 貴方には天使になってもらいます』
「なにそれ」
『天界の王座に立ってもらいます』
「え?」
真っ白な魔法陣がうちの真下に出てきて、転移させられた。
『ふふふ……これでカードは揃いましたわ』
うちは〈天使〉になった。
天界の天界王ってのに3年間なっててな。
完全に異世界生活を満喫してた。
下界であった事は夢……
そう思うようにしてた。
☆☆
『このループは終わらせなければ……』
そろそろ時間ですね。
皆様を下界へ……
『召喚魔法全解除……』
私が異世界へ転移させた人間を下界へ戻す。
『あら?せいなちゃんはもう下界に』
10年かけて集めた能力者……
誰でもいいんです。
黒沢やす様の…………
☆☆
「うぁぁぁぁぁ!!なんやぁぁ!!」
うちは、また転移した。
3年前に天界に来て以来の転移だ。
この世界はどんな世界なんやろうか……
「ま、まて、まて!やべえぞこれ!!なんだ!?まて、まてえええ!!!!」
なんや騒がしいな。
「魔界魔導書第9節第1章……結界術における最大魔術及び結界術に対する世界の理を適用致す」
上空の螺旋は光を放ちながら消えた。
「……何あれ」
木の影に隠れてうちはこの光景を覗き見してた。
「面白そうやな」
…………
「どうした?殺人鬼」
実は、うちはこの勝負負ける。
勝てる事であれば勝ちたいんやけどな。
うちの能力は剣技だけではない。
未来予知
これがうちの本命である能力の一つ
この能力はメリージュ以外の生命体に知られると消滅する。
そして、メリージュとうちの関係を明かすとうち自身消滅する……
「殺人鬼死ねぇぇぇええええ!!」
ちなみに、この試合を続けるとうちは死ぬ。
闘いたいんやけど、圧倒的に差がある。
レベルもそうや。
けど、うちの弱点を付かれてしまった。
相手が日本刀を使うと、うちは素手で戦わんといけん。
なんだか分からんけど、そういうルールらしいわ。
「リタイアするで」
「はぁぁぁ!?殺人鬼さんは逃げるのぉ?」
「……」
「弱っちーーっっな!」
ウザイ。ウザイ。ウザイ……
ウザい…………
(中堅戦 勝者 武田蘭)
ほんまはコイツ殺したい気持ちや。
でもな、近いうちに戦える。
その日までうちは強ならんといけん。
☆☆
「ショコラどした?」
今回は40秒ほどで決着がついた。
今、一勝二敗。
もう後は残されていない。
残されている相手はセドラ、ウムガルナだ。
「ごめんな、ちょっと体調悪なってん」
「大丈夫か?」
まあ、無理もないだろう。
この閉じ込められた空間、
約10分ほど滞在しているが、空気が薄くなっている気がする。
見た所換気扇が付いていない。
「ダーク、あつい」
「だな」
セータンが言った言葉に耳を向け、
セータンを見る。
「おいおいおいおい!!」
「今日は水色……」
「そう言う事じゃねえよ!!」
セータンは暑さのあまり服の脱ぎ始めた。
微妙にブラが見えるか見えないか際どい……
「ふぅぅぅぅー!!たまらないねぇぇーー!うーーしゃー!!」
「お前は黙ってろ」
エル・クラスが興奮を抑えきれていない。
いや、こいつはいつも興奮してるか。
「セータン、人前で脱ぐな」
「なんで?」
「集中出来ねえだろぉぉぉぉお!!」
俺は童貞だ。
あ、別にセータンで、その、妄想を膨らませたり…………
…………
「ダーク……」
「ど、どうした?セータン」
「触っても、いいよ……」
「え?!」
セータンは胸を俺に向けた。
谷間に汗が入り、妙にエロい……
「我じゃダメ?」
「え、ど、どういう、こと、だ」
「好きにしてい……」
…………
「ダーク?」
俺は妄想に浸っている。
「ダークー!」
「ん?あ、あ!ああ!なんだ?!」
「顔真っ赤だよ?」
「別に?そんな事ねえ、ぜ!?」
ダメだ。全く……セータンけしからん!
あ、勝手に俺が妄想してるだけか……
「とりあえず服着ろ」
「うぅ……」
セータンに服を着せる俺。
あまり考えたくないのだが、このシチュエーションやべえ……
少しこの時間を楽しんでいる俺がいる事が憎いが、最高だ……
「あひょーーーっっ!!しゃーーー!!」
「お、おい!?」
エル・クラスが興奮に打ち負け失神した。
(副将戦 開始致します)
こんなタイミングで言葉が使えなくなった。
セータンがまた手を握る。
俺も手を握った。
「ふふふ」
メリージュが笑った。
何故笑っているのかは分からない。
しかし、彼女には恐怖心が無いように見えた。
「さあて……ウムガルナ様」
「もう来ちゃったんだね」
ん?リングに上がらねえな。
あ、実は観戦側である俺達は対戦している人の声が聞こえない。
「どうしますか?」
「うふふふ……」
☆☆
「メリージュ どうかしら?」
「任務Aは現在遂行中です」
ふっ。メリージュは良い後輩女神だ。
「見ての通りです」
メリージュは目をダーク・ゴッド、セータンに向ける
「あらまぁ 良いですわね」
「ええ、まさか人間がしてしまうとは思いもしませんでした」
私は『神』
厳密には神の座に立った天使……
もうこの世に神は居ない。
「そろそろやりますか?」
メリージュが私に問いかける。
「やるか」
何もこの副将をしようって事ではない。
この場にいる他8名を始末する……という事だ。
私達がトーナメントをした所で能力剥奪権利は保有していない。
「さあて、殺してきます」
「ふふっ……」
メリージュと私は
世界侵略組織〈ベータ・ノヴァ〉の幹部。
名の通り異世界を侵略し、私達の世界にする。3つの世界を有している。
今いるこの世界の神を暗殺した。
私達はヒッソリと侵略していく必要があるの。
天使界や天王界、天魔界、冥界、魔界……
挙げればキリが無いわ。
異世界は無数に存在するけど、世界侵略は認められてないの。
どれかの世界にバレたら即殺されるでしょうね。
だから世界の神になるの。
世界の神になって、神としての仕事を表面上行う。
能力を与えなければならなかったのは、その理由から……
ま、説明はいいわ。
要は、この世界に居る能力者100人を殺して世界を乗っ取る。
ただそれだけの事……
全てはあのお方の為に。
「ふふ、ははははっっ!!」
メリージュが狂気の目に変わった。
この闘いは5対5のチーム戦ではない。
8対2の殺し合い……
になるはずだった。
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