第一章 3遂に敵現る!

 

 ダークとセータンは家を買う事を辞めた。

 結界を作れたからだ。


 結界って俺はアニメやラノベでしか聞いたことが無かったのだが、現実世界に第三の世界や空間を創る事らしい。

 結界を維持する為には、結界に初めて入った人物のMPを消費する事で維持されるらしい。



 確かに、毎回休憩中になって転移魔法を使って家に行き、そこから結界を毎回創ってからだと、チート能力研究する前からMPが大量に無くなり、時間もそれなりに消費される。



「ダーク、入るよ?」

「あぁ!」


 結界に入るには条件が二つ存在する。


 結界を創る現場を目撃する事

 人間である事


 この結界はダークとセータン以外誰も入れない事になる。



「はいよーーっっぁぁあっとぉぉ!?」



 小さな女性が結界の入口に踏み入れた。

 ダーク達以外は結界が見えていないはずなのに、何故だろうか……



「うぁぁぁぁあ!!なんやこれ!!」



 その子は消えた。結界に連れて行かれた。と言うべきだろうか。



「あぁぁ。やばいね」

「ん?セータン?」

「今回我が設計した結界はレベル4 消費MPは毎時間30 レベル59であるダーク・ゴッドでも2時間維持する事が出来ない」


「それって……」


 俺とせータンは慌てて結界の中へ入る。



 結界に着くと何も無い空間が広がっていた。地面、空、空気ぐらいしか無い。



「な、なんやこれ」


 黒髪ショートヘアのロリ担当オーラが満載な美少女が倒れ込んでいた。


「大丈夫か!?」


「ダーク!ダメ!」

「あ?」


 ダークは少女の方へ走っていた足を止め、セータンに振り返る



「うゔぅっ!」



 ダークの心臓に少女の手が貫通した。臓器の潰れる感覚、人の手が身体の中にある感覚、痛みと共に死ぬかも知れないという恐怖に襲われる。



「な、なんなんや!!うち何もしてへんで!?体が勝手に動いてん!!」



「ダーク しっかり!!」



 生まれて初めて心臓を貫かれた。くっそ痛いんだが、何故か死ぬ感じは無い。ステータスが関係してるのだろうか?



(キーワード ステータス感知しました)




 ……



 ダーク・ゴッドlv.59 通り名:睡眠の天才


 HP238/9801

 MP48/53


【スキル一覧】

 ・バイト休憩中女神対面

 ・バイト休憩中能力解放

 ・バイト休憩中想像した能力解放

 ・催眠術

 ・バイト休憩中召喚魔法

 ・バイト休憩中ブレストブレイド〈炎〉

 ・バイト休憩中ブリザード〈氷〉

 ・バイト休憩中ヒール〈光〉

 ・バイト休憩中疲労回復

 ・バイト休憩中結界術解放

 ・バイト休憩中転移魔法

 ・バイト休憩中武器自動生成

 ・残業すると経験値取得



 ……




 HPがダークの命を守っているらしい。




「大丈夫かいな!?!ってか何とかしてや」

「うぅ……!」


 ダークを貫いていた少女の手が引き抜かれた。



ーー結構やべえ……この状況……



「せ、せーたん、何故こんな……事が、」

「我以外の生命体が先に入ると我と同等のプログラムを加えるの」


ダークにそれを聞く余裕は残されていない。


「そんな事今ええから逃げてや!」


 少女が泣きながら俺達に攻撃を仕掛けてくる。


「ダーク!撤退するよ」

「で、も、この少女は……」

「いいから!!」



 ダークとセータンは結界から脱出し、コンビニ裏の公園に転移した。


「なあ、俺死にそうなんだが」


 今、ダークの服は血まみれで体に穴が空いている。誰かに見られたら悲鳴をあげられ、病院ではなく警察に通報されるだろう。


「大丈夫、確かダークってヒール使えるよね」

「あぁ……そうだが」

「使えばいいでしょ?」


 HPが無くなると言う概念があまり無かった為、ヒールの存在を忘れていたダークは初めてヒールを使う。


「ヒール!」


 HPが2回復した。

 MPが1消費した。


「なあ、これ雑魚過ぎ」

「詠唱しなさい ヒールスキル詳細から確認出来るはずよ」


 言われるがまま、ダークは心の中で唱えた。


ーーヒールスキル詳細を開いてくれ


(キーワード ヒールスキル詳細感知しました)



 ……


 ヒール〈光〉lv.1


 スキル詳細

 自身のHPまたは第三者のHPを治癒する回復魔法。光属性であるこのスキルは光が無い場所では使用不可。詠唱をする事で回復力が上がる。自身のみに回復する場合3節詠唱で行い、周囲全員に回復する場合は8節詠唱で『輪郭』を3節目、『広袤』を4節目に含む事でスキル発動が可能性となる。

 その他、特定人物への回復、敵人物への回復、人間以外に対しての回復は使用レベルが足らず使用不可



 ……



「なんか、良く分からんのだが、何節だか何をどうとか」

「ダークは魔術学校に入った方が良いかもね

  つまり節とはこういう事を意味する」


 セータンが空へ飛び、右の掌に真っ白な光の塊を宿す。


「光より我が領地を護衛せよ!!ヒール!!」


 公園全域にヒールの輪が広がる。


「ん?これはどういう事だ?」

「今のは、上級スキルよ 本来6節必要とする」


「は?」


 ダークには到底理解出来る話では無かった。


「いい?だからね……」



 そこから、セータンのスキル詠唱唱え方講座が始まった。

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