第388話見えぬもの

昔は将来を見つめて一歩ずつ歩いてきました。

解雇され膀胱がんになって腎不全で透析をしてからは足元を一歩ずつ確かめるように踏み出しています。

明日というのが見えないからです。

珍しく編集長とランチに来ています。

「これからこのNPOはどうなるんですか?」

「前に進むだけです」

「最近社員の中には新理事がNPOを企業化しているのではないかという人がいます」

利益中心の流れが急に起こっているのでそう思われているのでしょう。

「これは反動なのですよ」

ボランティアの流れを止めようとした反動です。

「企業化と言っても分野はNPOが立っていた場所と変わりはありません。ただ助成金ではなく自立するが柱です」

「そうですね」

「これからは社員もまた見えないものだけど向かうべき姿を自ら描かないとダメです」

「今日は2時間ほど部内でフリートーキングしましょう?」

私も昔会社が上場に向かった時、私も含めて目標が上場の言葉に隠れて見えなくなったのです。

常に漠然とした期待と不安が混とんとしていました。

「新理事とは話を?」

「彼は今はNPOの健全化で頭が一杯です。今回で行政から離れたわけですから」

「見えないものを見るのですね」

そうです。いつまでも与えられたものばかり見ていてはだめです。

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