第372話最悪を考える

透析後編集長とNPOの近くの喫茶店で会います。

私は形だけ事業開発室長という名刺をもらっていますが、正社員でも委託社員でもありません。

だからNPOの運営には全く関わっていません。

「少し相談に乗ってください」

珍しく困った顔をしています。

彼女はフリーペーハーの編集長として委託契約をしています。

実は社員は若い2人だけなのです。

「今回行政から助成金の減額が通知されてきて、NPOの幹部会に私も部の代表で出席しました」

その時の報告書を開きます。

「予想よりひどいなあ」

「今回の減額で見事に!6部門のうち5部門が赤字になります」

「フリーペーパー部門だけが黒字かあ。それで方針は?」

「議論はしましたが解決策は出ません。もともと行政の外部団体の性格が拭えていません。採算という発想がないのです。幹部職員は大半天下りでNPOでは考えられない給与なんです。それに比べて若い人はの給与は安い。それで幹部職員を何人か受け入れるように言われたのですが、私は大反対です」

「採算性を上げるのには相当な時間がかかります。それにただ座っている人を受け入れるのは無理ですね?」

行政の定年後のラインになっていたのですが、独立採算を言われるなら思い切った人事と組織化改革が必要です。

「おそらく理事長が相談してくると思います」

「一度組織を調べてみます。最悪の場合独立も考えておく必要があります」

最悪を考えておく必要があります。

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