第373話透析人間ベム
「今日は軽く飲むか?」
やはり理事長が夕方編集室を覗きます。
編集長がニコリと笑って、
「お先に」
とここ2日間作って来た編集室の独立採算プランをファイルに入れて渡します。
二人で何度か覗いている小料理屋です。
「若竹煮が出来ますよ」
理事長は都銀の役員をされていて、初めて理事長になった時にここで私がベンチャーの賞を彼から手渡されたのです。
もともと互いに銀行員だったので発想が似てるようです。
「助成金が減るとここはあばら家だな」
と最近から焼酎に変えた理事長が珍しく私のビールを1杯コップに入れて旨そうに飲みます。
「行政が助成金を削減する時代になったのです。当然NPOも体質改善すべき時です」
「もう20年前に君が言ってたな。NPOもボランティアでは生きていけないのだな」
私は編集長と作った編集室の今後の数字を見せます。
「現在単体で編集室は黒字ですが、この半年でこの事業だけでMPOの固定費を捻出できるようになります。だが問題は人件費です」
「そうだな」
「でも若い人の給料は頑張ってあげていきます。年金を貰われている幹部の方は思い切った減額を」
「難問だな」
「もし認められないなら編集室は独立起業を考えていますよ」
「儂も最後の仕事として腹をくくらなあかんな」
「人件費の目標を出して見ました。これなら半年後全体で当期黒字になりますよ」
「君が社員で入ってもらうわけにはいかないか?」
「私は透析人間ベムです」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます