第312話理解していない

「携帯忘れたでしょう?」

女房は採用面接に落ちてまた今日もハローワークです。

透析が終わって今日は助成金の作業をします。

8時間ほどの時間がかかるので最近は机に張り付いています。

携帯をとるとあの元社員たちの裁判を引き受けている弁護士です。

「工事課長が行方不明になったのはご存知ですね」

「ええ、聞いています。彼の性格からすると金にならないものからは逃げだしますね」

「それでもこれ以上欠席が続くと会社側が勝訴します」

「彼には財産はないですよ。弁護士に金を払うのも嫌なのでしょう」

「でも会社側はなぜ取れない金額を増額したのでしょうか?」

「この会社の十八番の脱税ですよ」

弁護士は税法には案外暗いのです。

「それより経理課長の方は?」

「こちらも誰も協力してくれる人もいません。それで顧問税理士が親しいというので会いましたが、彼に指導したことも相談を受けたこともないと冷たいのです」

「経理課長は・・・」

と言いかけてこれ以上話する気になりません。

「やはり前の専務はだめでしょうか?」

「電話番号だけ教えますので口説いてください」

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