第284話裁判官
予定の時間が済みましたが、フリートークは更に盛り上がって終わりません。
弁護士の先生が小声でトイレ休憩の後も続けてもらえませんかと耳打ちをします。
「経歴を見れば羨ましい職場でいい地位におられてようですが、どうしてブラック会社に勤めるようになったのですか?」
30歳半ばの会社員です。
「人生は自分ではどうしようもできないことが起こります。有名な事件で上場を逃してそこから会社を起こす羽目になったのです。この会社は最後の会社勤めの気持ちで入りました。問題を抱えている会社でしたが、一つ殻を破れたら立派な会社になるという感触がありました」
「私も同族の会社なので分かりますが、超保守的でそう言う前向きな考えは弾かれると思います」
「そのようでした。こういう会社は経験がなかったのです。すでに社員が仕事を抱え込んでいました。そこで総務部長という地位を貰っても仕事がないのです」
「それは中小企業の典型ですよ」
60歳くらいのジャンバー姿の男性が頷くように発言します。
「らしいですね。それで1年ほどしてみんなが嫌がるホテル部門に手を上げました。ここも問題は山積みで一人の出向では手に負えません。でもそれだけちょっとした改善で売り上げが上がったのです。そしたら次期専務の噂が聞えてきました。確かに社長から呼ばれることも多くなり、新たな社員も送ってくれて社用車も・・・」
「それが不幸の始まりですよそんな会社では」
合いの手が入ります。
「その通りです。いつの間にか古い社員の乗っ取りの噂で懲戒解雇の道に」
話していて自分であの頃の状況が見えてきました。
こんなこと会社で働いた経験のない裁判官に理解してもらうのは至難の業です!
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