第206話ピンチをチャンスに変える

さっそく人事部長から相談役の来阪が伝えられて、職業訓練にも久しぶりにネクタイを締めて出かけました。

立派なレストランでこういうところで食べるのは久しぶりです。

「ごめんなさい。会議が延びたの。久しぶりの同期との会食ね」

「私は同期とは思っていませんよ。私は平であなたは初めから副社長」

「それって結構うっとうしいのよ。他の取締役は白い目で見るし、ただ座っているだけ」

「それは分かります。今の私が2軍落ちした老投手の気持ちでいます。次の活躍の場を手探りで探しています」

「それは私も同じですよ。今の役員会では社長を含めて全員40歳代ですよ。60歳代の私はおばあちゃんです」

「でも現役です。羨ましい。よくあんな難しい時期に社長をされたと思います」

「そのために何年も副社長で控え選手だったのだから。でもあなたが東京にいた頃銀行の出向者の会に毎月呼んでもらったのは楽しかった」

「そうですね。あの会は同年代の人が多かった」

「ひょろりと頼りない人、その人が今は銀行に戻って頭取になっています。今でも時々食事をしますよ。あなたもまだまだ若いのだからもう少し第一線で働かれたら?」

「いえ、若い時に無理をしたのが祟って癌にはなる腎不全にはなる、そこに持って来て不当解雇です」

「しばらく休めと言うことかしら。現場を走り回って成績を上げていたあなたが羨ましかったですよ。でもピンチをチャンスに変えるそれが得意だったように思います。労働問題は今私しかできないテーマです。力を貸してください」

「本当にありがたいです」

2軍落ちした老投手に再びお呼びがかかったという気がしています。

「この後には私が本当にしたい農業ビジネスがあります。頼りにしていますよ」

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