第203話懲戒解雇の導火線
今日は土曜日で職業訓練は休みです。
最近はベランダで農業の真似事を少し本格的に始めています。
女房と時々これからの人生について話していますが、腎不全と裁判の行方が見えないうちはなかなか方向が見えません。
女房が新しい仕事場の不平を残して出かけます。
10時に家の近くの喫茶店で、不動産事業部の事務担当の係長に会います。
「すいません。会えた立場ではないのは分かっていますが?」
「ホテルに行ったと聞いていますが?」
「ホテルの部長だった彼からも止めとけと言われていましたが、あんな過酷なところとは。3日前に辞表を出しました。3人が行ったのですが、もう2人辞めています。ホテルの中が今回の事件の影響で泥棒の巣窟になっています。ホテルの元専務の人も首になって、今は総務部長が推薦したホテル襲撃のボスが現場の責任者になって、堂々と裏金を各ホテルから集金しています」
「今日は?」
彼とは一番仕事では接していたので親近感がありました。
「専務には謝りたいのです」
「それはどういうことですか?」
「私が社長からもう1年も前から首を伝えられていました。これを拒んでくれていたのが不動産部長だったのです。それで専務からホテルへの出向の話を貰った時かなり悩みました。この話は娘とも話していたんです。娘は憂鬱に仕事を続けている私にいい機会と賛成していました。それが魔がさしたのか部長に内緒にと言われていたのですが話してしまったのです」
この話を進めたのは相棒の部長でした。
「今思うとこれが専務の懲戒解雇の引き金になったと思います。娘にこの話をしたら家を出て行きました。前の女房と別れる原因も不用意な言葉からだったのです」
彼はもう一度頭を下げると二人分のコーヒーを払って出て行きました。
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