第171話社長逮捕で真相は解明されるのか
「ここまで来たら行くしかないと思う」
女房の同意を受けて弁護士に強引に賃金仮払いの預り金を送金しました。
膀胱がんと腎不全を背負ってどこまで頑張れるのだろうか?
でも進むしかありません。
今日は刑事訴訟の弁護士から職業訓練後証人調書の確認に来てほしいとありました。
部屋に入るとネクタイを締めた見知らぬサラリーマンがいます。
私にはもう名刺はないので相手の名刺だけをいただきます。
某大手新聞の記者です。
「彼は時々刑事事件の時に連携しているのです。それで今回のことを話していたら初めてOKが出て」
と言いながら明日の朝刊のゲラを広げて見せます。
「実は本社の社長があなたが言ったように今朝逮捕されました」
「でもこれは別件逮捕です。普通は広報が出てきませんが、今回は詳細に事件の内容を説明してくれました。これは警察が求めた逮捕ですね」
新聞記者が頷くように言います。
「私は弁護士さんを始めに調書を調べてみてもう一つこの社長が見えないのです。どの調書を見ても社長が直接出てきていないのですよ」
「私も仕えてきた歴代の社長の中では珍しいタイプです。数人の幹部にぼそぼそ意志らしいことを伝えて自分の思いを形成してゆくのです。幹部はそれを極端に現実の形に変えていく。それが気に食わなければまた別の幹部に違う指示を与えるのです」
「困った男だなあ」
「彼は当初和解して新しい会社体制を認めましたが、その時点から頭の中では自分の思う会社体制を着実に描き始めていたのです」
最近になって私にもようやく見えてきました。
でも警察や裁判官がこの複雑なこの男の心の中を読めるとは思いません。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます