第169話別件逮捕
「1時間ほど今日都合つかないか?」
恐ろしく丁重な声でY署の暴対刑事から携帯です。
「迎えに行きますよ」と言われても・・・それで職業訓練が終わった4時半に。
「鞄見ますか?」
「いえいえ今日はそんな時間はありませんので。この調書を読んで訂正があれば赤を入れてください」
10枚ばかりの調書を机に載せます。
「本社の不動産部長と課長がホテル占拠に入ったという話ですが?」
「嫌に情報が早いですね。A署が1晩泊めましたよ。2人とも前がなかったので返したようですわ。でも本部から苦情がありましてね。何らかの手を打たないとということになったのです」
調書の内容は現在の問題とは関係のない社長の自宅登記について書かれています。
「社長は住んでいるところは登記のマンションではありませんね?会社の所有物件に住んでいる?私も任意でそこに行きましたからね。凄い豪邸でプールもある」
「そうです。登記場所は倉庫になっていると聞いています」
「事実ではない部分がありますか?」
「書かれている内容は事実ですが、これは私が供述したような形式になっていますが、これは別件逮捕というやつでは?」
「・・・。」
「彼にはもっと聞きたいことがあるんですわ」
「でも社長は表だって指示をしない人ですから」
と言いながら調書にサインをして押印しました。
単純な労働審判がなぜこんな複雑なことになるのでしょうか。
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