第168話暗黙の指示

腎不全は一進一退です。

昨日の元同僚の女性の電話が気になりますが、今更私がどうかできることでもありません。

病院の診察を終えて昼からの職業訓練の授業に顔を出します。

昨日から部長には何度か携帯を入れていますが完全に電源が切れています。

いつの間にかホテルの社長から「手が空いたら携帯ください!」と留守電が入っていました。

「遅くなってすいません」

「いえ、先日殴り込みがあるかもと教えていただいていた件です。今日昼過ぎにあの不動産部長と社員1名が市内のホテルの1件に現れてフロントを占拠しようとしたようです。あらかじめ市内のホテルの支配人にはこのことを知らせていたので、交番の巡査に声をかけていたようです」

「2人だけですか?」

「不動産部長と課長の名刺を持った2人と聞いています。大声を上げて威嚇したので一晩泊めるようです」

相棒の部長はいかなかったようです。

「ホテルは今どうなっているのですか?」

「私も解任されたので現場には出ていません。うちの専務が親父の指示でホテルの運営をしています」

「弁護士は知っているのですか?」

「未払い金の回収と実際の管理契約の解約はされていないので、その趣旨の内容証明を送って自衛しているようです」

「相手は弁護士を入れてきていない?」

「どうも社長得意の暗黙の指示ですね。でも専務もボロボロで自分の部下の支配人達に裏切られて半分の店舗が本社の管理下に入っています」

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