夢のような素敵な現実
そんな冗談言うのはやめてくれ、だなんて流すことはできなかった。いつもの俺ならそう流していたのだろうが、今回はそうもいかなかった。
いや、そうもできなかった、というのが正しいかもしれない。
あまりに真剣な顔に、誤魔化すことは許さない、といい聞かせられている気になった。
「ん、と…それって、」
樹兄ちゃんがふわりと微笑む。笑ってはいるんだけど、どこかピりりとした緊張があるような、そんな感じだった。
「俺ね、のぶのことが、好きだよ」
「…っ、」
「好きなんだ。ずっと前から」
「ほ、んと?」
夢、みたいだ。
素敵な現実がこんなに早く訪れるなんて。
もっとも、訪れる予想もしていなかったんだけれど。
樹兄ちゃんが嘘をついてないのなんて分かってる。でも、聞かずにはいられなかった。
「ほんと。のぶのこと、大事に想ってる」
「…樹兄ちゃん」
「だからさ…俺にしない?」
「? どういうこと?」
「田中くんより、俺の方がいいんじゃないか、ってこと」
「え」
そう…だった!
まだあれが嘘でしたって言ってないんだった…
というか…
嘘つきました、って告白できるのか?今、この場で?
無理無理無理!
俺だって嘘の一つや二つ、ついたことはある。善人振るつもりはないけれどね。
樹兄ちゃんは完全に勘違いしている。早く嘘だから、俺はフリーなんだよとも言いづらい。
どう説明しようかと、俺が悶々と考え込んでいると、樹兄ちゃんが徐に立ち上がった。
「樹…兄ちゃん?」
「のぶ…」
その表情にはどこかうすら寒いものがあった。要するに、超こわい表情で樹兄ちゃんは俺を見据えていた。
「沈黙ってことは、あいつの方が俺よりいいってこと?」
「え、いや、そそそそういうわけじゃ」
「どもりすぎだよ、のぶ」
そして樹兄ちゃんは、俺の背後に回り込み、そっと後ろから抱きしめてきた。抱き込んだその腕がとてもあたたかくて、優しくてドキっとした。
「のぶ、俺はあいつよりコッチはうまいと思うよ」
「え…、っ!?」
そうして低いイイ声で囁きながら、俺の腰あたりを撫でまわしてきたのは…ええ、違う意味でドキリとさせられましたよ。
樹兄ちゃんの体温が今までよりぐっと近く感じられて、俺はこの状況にくらくらした。
樹兄ちゃんの言う…『コッチ』とはきっとアッチのことだろうなと思う…たぶん。
爽やかな容姿のこの人から、そんな言葉が飛び出すとは思ってもみなくて、俺はただただ驚くばかりだった。
樹兄ちゃんのことは大好きだけど。
まさかそういう風にはなれないだろうなと思っていたから、こういう状況は想像もしてなかったんだ。
いや、想像してても対処できなかったと思うけどね!
「考え事? 余裕あるんだね」
「どわあああ!?」
そんなこと考えているうちに、腰のあたりにあった手が…あ、あろうことか俺の…アソコあたり…というかしっかり触っちゃってます!!信じられない!
「もー、色気がないなー」
「いやいやいや、ちょ、どこ触って…っ、」
耳元からはため息とともに樹兄ちゃんの残念そうな声が漏れた。その色気に俺はやられそうになる。
というか、俺に色気とか求められても激しく困る。あなたに敵うわけないでしょうが。
「まだやわらかいね、のぶのココ。かわいい」
「絶対かわいくないから! どうしたんだよ樹兄ちゃん!」
「…ね、アイツにはもう触らせたの?」
「はあ!? も、離して…っ、」
話している間にも、樹兄ちゃんの手は休まることなく俺の愚息をズボン越しに撫でてくる。
や、やばい…樹兄ちゃんの綺麗な手で撫でられているというだけでなんだか気持ちよくなってくる。自分でもそこまで慰めたことがない上に、人の手でこうやって触られるのは初めてで、不規則な刺激に頭がのぼせそうになる。
やわやわと揉まれる度に、だんだんと俺のモノが硬度を増しているのが分かって、体がカッと熱くなった。
ヤバイ。マジでやばくなるぞこれ以上は。
「はっ…、も、やめて…っ、」
「…その顔、わざとやってるの?」
これ以上続けていると、みっともない姿をさらしてしまいそうだったから、やめてほしいと懇願したんだけど。
樹兄ちゃんはよくわからないことを言って、再度溜息を零した。
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