第5話

目的地近くの駅につく。降りた先にも案の定雪が積もっていた。しかも、ただ積もっているわけではなく、昼夜の温度差でアイスバーンになっている。一歩、また、一歩踏みしめる毎にジャリッ、ジャリッ、という音が聞こえ、バランスを危うく崩しそうになる。しかし、昔の感覚を思いだし、なんとか転ばずにすむ。こんな所でつまづく訳にはいかない。先はまだ長いのだ。駅前のロータリーの脇を抜け、古びた看板やお土産屋を見る。この雰囲気、雪にまみれ古びた町並みが錆び付くこの色合い。私がこの街を出たときと何一つ変わらない。帰ってきたのだと思った。ホントはこんな形では帰ってきたくはなかった。まるで負け犬だ。風が冷たい。海が近いせいだろう。バスが出るまではあと五分程度の時間がある。コーンポタージュでも買おうか?ああ、そういえば妻ともこの街を出た時も缶入りのコーンポタージュを飲んでいたっけ。

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