P22


「青山くんって、透ちゃんのライバルの青山佑介?」


「…透?」


「緑台第三中の、葉山透くん」


「あっ」


思い出した。僕がけがをした大会の日に少しだけ話をした、葉山くん。

でも、彼がどうして僕のライバルなんだろう。



「透ちゃんね、3年生の夏、関東大会で3位になったらしいんだよね。でも、『俺はまだまだこんなもんじゃない!青山佑介には追い付けない‼』って。今は、県内の強豪の西沖高校に通ってるんだってよ!」


「え!そうなんだ!」


関東で3位!すごい。そして、西沖高校も、スプリンターなら誰しもが知っている超強豪校だ。


「おーい!青山くん!スターターのピストルやってくれないかな?」


「あ、はい!」

青山がベンチから離れて陸上部のところへ駆け寄っていく。


ベンチには、その後ろ姿をじっと見つめる佐倉が座っている。独り言のようにつぶやいた。


「でね、透ちゃん、こうも言ってたんだ。


『あの森林での出来事が、俺の陸上人生を大きく変えた』って。


『カモシカが、俺の人生を変えた』


      って。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ステップ! @shikahato

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る