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アップのためにトラックを走り始めた。
部員は大体30人ちょっとくらい。
和気あいあいとコミュニーケーションを取るグループと1番後ろでバトンパスの練習を兼ねながら走っているグループがいた。
4継。
陸上競技の花形種目の一つだ。
2人しかいなかった中学校の頃からずっと憧れていた。
個人競技と思われがちな陸上競技の中でチームワークが最も発揮される種目。
大会の最終種目として行われる4×100mRで、優勝したチームの喜びようをいつも見ていた。
僕には想像できないほどの達成感、高揚感があるのだろう。
「おっ、早速一年生が来てるな。」
僕と佐倉さんの方へジャージ姿で頭にサングラスをかけた男の人が歩いてきた。
「あ、こんにちは。」
顧問の先生だろうか。
「旭ヶ丘高校陸上部コーチの高峰です。よろしくね。」
コーチ、高校の部活はやっぱりすごい。
専属のコーチがいるなんて。
「い、一年生の青山です!よろしくお願いします!」
「一年生の佐倉です。部活動紹介見てマネージャー希望で来ました!よろしくお願いします!」
佐倉さんも僕に続けた。
「あの福田の馬鹿な部活動紹介見て入りたいと思ったの?ハハハ!佐倉さん、面白いねえ!マネージャー是非、よろしくね!」
軽々と馬鹿と言い切った。
やはり、この学校で福田部長の味方は佐倉さんだけのようだ。
「で、青山くん、君もマネージャー志望かな?」
「あ、いや、僕は選手として。」
「そうか、そうか。専門は?跳躍種目かな?」
「一応短距離やっていきたいなって思ってます。」
「あ、そうなんだ。ごめんね!身軽でバネもありそうだったからてっきり!」
たしかに、僕の華奢な身体は先輩たちのような短距離選手の身体ではない。
「100mのベストはいくつなのかな?」
高峰コーチが身を乗り出して聞いてきた。
「えっと、11"60です。たしか。」
あの時は怪我があったので、正確なタイムははっきりとは覚えていなかった。
「へえ!それは期待の新人だ!
あれ?でもおかしいな。中学の県大会はチェックしてるはずなんだけど、青山くん出てた?」
「あ、それは、最後の総体の準決勝で怪我しちゃって。それで県大会は出なかったんです。」
「そうなんだね。それはかわいそうに。これから高校でしっかりと身体つくって、怪我にも負けない、スプリンターの身体つくっていこう!」
スプリンター。。。
高峰コーチの言葉に僕は胸が高鳴った。
「あの、高峰コーチはちなみに何の種目専門なんですか?」
「ん?俺は、デカスロン。十種競技だね。だからなんでも教えられるぞ!ハハハハ!」
十種競技。
確かに高峰コーチの身体つきはどの種目とも違う、パワー、スピード全てを兼ね備えていそうな、単純に格好いい。そういう身体つきがジャージの上からでもわかった。
「じゃあ、俺は練習見てくるから。ここでゆっくり見学しててね。」
高峰コーチはストレッチをする部員の元へ走って行った。
「ねえ。青山くん。」
佐倉さんが話しかけてきた。
「青山くんって、透ちゃんのライバルの青山佑介?」
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