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救護室に入ると、まさに治療中の青山がベッドに座っていた。
「おい、青山!大丈夫、、、な訳ないよな。」
青山の足にはアイシングバッグが痛々しく固定されていた。
「あ、葉山くん。肉離れ、みたい。今シーズンはもう走れないかもって。」
今シーズンって、、、じゃあもう青山の中学の陸上は終わりってことかよ。
予選であれだけの走りして、準決でも肉離れしながら自己ベスト更新するようなやつが。
そいつとはもう、走れないってことか。
自分が怪我をした訳ではないのに、俺はやたらと悔しく、行き場のない怒りを感じた。
「そ、そうか。明日は来るのか?」
青山は申し訳なさそうに首を横に振った。
「わからない。明日病院でしっかり調べてもらわないと。後輩の稜も決勝にいけなかったし。」
絶対負けないと決めた相手と本気で勝負することはできない。
それがこんなに悔しいなんて。
青山が戻ってきた時、俺はチャンピオンとしてこいつに勝ってやる。
翌日、100mの決勝を迎えた俺は、いつになく冷静だった。
普段とは違い、誰とも話さず自分のレーンだけを見つめていた。
地区チャンピオンとして、俺はお前を迎え撃つ。青山。高校で勝負だ。
そこから先はあまり覚えていない。
歓声も、風の音も何も聞こえなかった。
フィニッシュラインを駆け抜けたあと、怒涛のような歓声、心臓の音、肉体の疲労。全てがのしかかってきた。
11"36
中学時代のベストタイムを叩き出した瞬間だった。
中学編 完
🏃🏃♀️🐦
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