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鶴田を見送ったあと、僕は1人で集中し始めた。

鶴田は予選最終組。僕は準決勝1組目。

申し訳ないけど、応援している暇はなかった。

招集も終わり、いよいよホームストレートで21人がレースが始まるのを待っている。

400mの予選が行われている中、準決勝の走りをイメージし始める。

スタートから30mまで、焦らない。

一歩一歩確実に地面を踏んで行く。顔を上げないで我慢する。

中間疾走。より力強く。リラックスしてまだまだ加速する。

60mから先。勢いをそのままに、回転数を上げ身体がバラバラにならないようにそのまま駆け抜ける。

よし。このイメージだ。


『カモシカなんですよ。先輩の走りは。・・・』

ふと、鶴田がさっき言っていたことを思い出した。

表現が独特というか、恐ろしい偶然というか。

あんなに、力強く、しかし、軽やかに僕は走っているのだろうか?

そもそも僕の走りって正しいのか?専門的な先生に教わったこともなく、ほぼ自己流で。

そうこう考えているうちに400mの予選は終わっていた。

あ、鶴田は?どうだったんだ?

結果を知ることもなく、すぐに僕の番が来る。

スタブロをセットし、コールされるのを待つ。

『第四レーン4396番青山君。緑台第一中学校。予選トップのタイムです。』

「カモシカのような走り。力強く、軽やかに。よし。」


「ON YOUR MARKS 」

やってやるさ。

「SET」

全国まで行ってやる。

「バン!!」


力強く踏み出した。そこからはいつもの自分だけの世界。

顔を上げた。

よし、誰もいない。ここからもっと加速だ。いつもより力強く!


その時、


膝が抜けるような感覚がした。


!?


一瞬バランスを崩したが、立て直した。

そのままゴールまで全力で駆け抜けた。


そして、ゴールした途端右のハムストリングに激痛を感じた。

痛い!

すぐにトラックの上に倒れこむ。


横目に大会委員と人と、鶴田が駆け寄って来るのが見えた。







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