第3話 夢の中② ~僕の昔ばなし~
昔…昔と言っても、数ヶ月前のこと。
僕達は数ヶ月前…高校2年生になったばかりの4月に出会った。
僕はその頃にはもう彼女の存在を知っていた。
そして彼女も、僕のことを知っていた。
なぜなら、僕は目立つタイプらしい。
何が良いのか僕にはさっぱりわからないが中学の頃から、告白されることが多かった。
僕はそれが嫌いだった。
告白してくる人達全員、僕の外面しか知らない。外面しか求めていない。
内面なんて知る気もないのだ。
それがわかった途端、僕は今まで優しくしていた人達へ冷たく当たった。
だって、これが僕の本性だから。
皆、知らなかっただろう?
嘲笑する。
そんな性格のまま高校に上がり、彼女を知った。
少しだけ、僕に似た雰囲気のある女の子だった。
1年の頃はクラスが離れ、休み時間の移動教室のときに見かけるくらい。
彼女は毎日笑っていた。
笑顔を絶やさない子だな。能天気なのかな。
そんなことを思っていた僕の方が能天気だった。
放課後、帰宅部の僕は即座に家に帰ろうと席を立った。
「あの……っ!」
声を無視して歩き出した。
「まって…!」
袖を掴まれ、僕はビクッとした。
「なに……。」
見るとその子はクラスでなら一番人気であろう美人系の女の子だった。
クラス委員長とかもやっていたような、やってなかったような…。
「あの…、これ……!」
美人女子は僕に紙を突き出してくる。
まだほとんどの生徒が残っているため、僕は注目を浴びてしまった。
(…いやなのに………。)
「なにこれ。」
僕が冷たく聞き返す。
「あの…、…の、あ、アドレス、書いてあるんです……!よ、よかったら…!」
僕は呆れた。いや、まぁ、察していたんだけれど。
「ごめん。僕、好きな子いるから。」
決まった嘘のセリフで会話を終わらせようとする。
「え、だ、だれ……?同じクラスの、子…?」
あぁ、もうめんどくさい。
「はぁ……」
ため息をつく。
「そんなのさ、君なんかに関係無くない?それとも何。他人の詮索とかが趣味なわけ?」
「ち、ちが……!」
泣きそうな美人女子に追い打ちをかける。
「え、違うの?あ、わかった。あれでしょ。僕の好きな子に、自分の方が外面いいんだからお前が叶うわけないとかってサイテーなこと言って脅しに行くんだ。」
僕は見下ろすようにして口元だけ笑って言った。
美人女子は走り去って行った。
傍観者達は口々に僕の悪口を言う。
その声を背に僕は立ち去った。
下まで降りてから忘れ物に気付いた。
「あぁ、もう…」
今日は災難だなと思いながら来た道を戻って行く。
教室に戻ると早くも誰もいなかった。
自分の席に行き、目的を果たす。
「あ。あった。」
そして、さっきあった出来事を思い出す。
きっと美人女子は僕に想いをよせていた。
それに対して僕は…、
「僕の方がサイテーだ。」
しばらく立ち尽くす。
すると、何処からか泣き声が聞こえた。
僕は気になって、泣き声のする方を目指した。
教室を出て廊下を歩く。
教室を2つ通り過ぎたところで、泣き声の出どころがわかった。
そこは、彼女の、
泣き声が気になり、クラスを覗く。
彼女だ。
彼女が、独りで泣いている。
何故か、泣いている。
僕はそのまま彼女のいる教室へ入って行った。
君と僕との夢の旅 飴乃 -いの- @ameno_ino
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