第14話 新アトラクションだ!
つづらは凄い! 今まで毛嫌いしていたが、実用面では抜群だよこれ。ポイントもリーズナブルで言うことは無い。見た目が気に入らないだけだ。
売店はつづらを横に三つ並べて、重なるように上へ二つつづらを設置する。一段低いところは今のところただのベンチだが、いずれコンロなどを置いてもいいし、売り物を並べてもいい。
反対側のつづらには氷水を張って、中にドリンク類を放り込むことができる。ついでなので、冒険者用につづらを二つ準備した。こちらは希望次第で氷水を入れることもできるし、荷物入れにも使うことができるのだ!
バーベキューコンロは蓋を開けたつづらで代用することにした。これも便利だ……何てことだ。ステージも含め全てつづらで事が足りてしまった!
こ、これではいかん! 何かつづら以外の施設が作りたい。そろそろアトラクションも欲しいが……ポイントが無いんだよな。
俺はしゃがんでつづらに青色のペンキを塗っているクロのパンツを見ながら、何か作成できないか思案する。
そうだ! ダンジョンには罠……トラップを作ることができるんだ。例えば、回転する床とか通り抜け出来る壁、落とし穴なんかもできる。
現状地下三階までしかダンジョンの深さは無いけど、地下一階の広場から少し出たところに落とし穴を作り、同じ位置の地下二階に落とし穴を作るとする。そうしたら、地下一階から落とし穴を抜けると地下三階に行くってわけだ。
地下一階の天井にロープを固定して、飛び降りれば……バンジージャンプが出来そうじゃないか?
さっそく試してみようと俺は落とし穴を作成し、クロを呼ぶ。一人でやっても良かったんだけど、先日冒険者が来た時に何もできなかったとへこんでいたから、彼女に飛び降り実験してもらおうか。
クロにロープを持たせて天井にロープを固定してもらう。彼女は身が軽く、壁に張り付くことなんて朝飯前だ。俺は垂直の壁でもくぼみさえあれば登ることはできるけど、彼女のように天井に張り付いて作業をするなんてことはできない。
光コケを天井に張り付けてもらった時も、役に立ったじゃないか! クロ。
「クロ―、固定できたか?」
「できたでござるよ! このままロープをたらすのです?」
「おー。頼む」
俺の言葉を聞くとクロは手に持ったロープを離す。天井で作業をするときにはワンピースはやめろって言ってるのに……彼女はお気に入りなのかいつも猫柄のワンピースを着ている。今日は黄色のワンピースで、裾が捲れ上がりパンツが見えている。
今日は黄色と白の横縞だな。突っ込んでも気にしてくれないから、もう何も言わないけどさ……
これでロープを腰に括りつけて落とし穴に飛び込めばバンジージャンプができるはずだけど、やってみるか。
「クロ、ロープを持ってこっちに戻ってくれ、あ、いや。クロが試してみるか?」
「ん、何をです?」
当たり前だけど、クロは全く俺の意図を分かっていなかったので、バンジージャンプについて彼女に説明する。
「おお。面白そうです! でもロープだとゴムと違って落ちたらそのままじゃないでござるか?」
「うん。一回ロープで試してみて、うまく行きそうならゴムをユキに出してもらおうと思ってさ」
「さすが! マスター殿です。ポイントを無駄にしないでござる」
ロープは元から居住スペースに置いてあったんだよね。何に使ったのかもう覚えてないけどさ。
「じゃあ、クロ、頼む。あああ! すまん少し待ってくれ」
俺は飛び降りようとしたクロを背後から抱きしめて彼女の動きを止める。少し慌てた様子で彼女は俺の方へ首だけ横に向ける。
「な、なんでござるか! こんなところで……まさか。いいですぞ! 構わんですぞおお」
何か分からないがクロが突然興奮し始めた! 待て待て!
「待てクロ。飛び降りて、ロープが役に立たなかった場合、そのまま三階の床にぶつかるだろ」
「ああ。そんなことでござるか? その程度の高低差……吾輩にはあって無いようなものですぞ!」
「さすが猫又だな! 着地はお手の物ってところか」
「もっと褒めてくれていいですぞ!」
何やら上機嫌になってくれた。本当にこいつはチョロイ……こんなんで大丈夫かよ。すぐ騙されそうで心配になってくる。
俺はクロにバンジージャンプを実行するように促すと、彼女は一切
「どうだクロー?」
「ダメでござる。深さが足りないです!」
どうやら、バンジージャンプするに距離が短すぎるらしい。速度がつく前に落下が止まるくらいの短さならいけるぽいけど、それだと意味が無いんだよな……
「仕方ない。バンジージャンプはあきらめよう」
「でも、この落とし穴は便利ですぞ。居住スペースとステージをショートカットできるでござる」
「なるほど。そんな使い方もできるか。じゃあ、ロープは
バンジージャンプ施設は失敗だったが、落とし穴はこのままにしておこうか。俺は落とし穴にそのまま飛び込み、落下の衝撃を殺すように膝から衝撃を逃しつつ両足で着地する。
クロほどじゃないけど、きちんと着地すれば俺でも一階から三階へジャンプすることは問題ない。登る時はロープを使えばいいし。
俺とクロは居住スペースの食堂に戻ると他に何か作れないものか頭を捻るが、クロはもちろん、俺もそこまで頭脳労働が得意なわけじゃないからすぐ煮詰まってしまう。
ポイントがあればいろいろ作りたいものはあるんだよな。メリーゴーランドとかジェットコースターとか、宿泊施設とか、大衆浴場とか。先日の冒険者二人と話をした感じだとキャンプ目的でも使ってくれそうだから、浴場まではいかなくてもシャワーに加え……ああ!
「クロ! キャンプするなら台所か洗い場がいるよな?」
「あ、そうでござるね。水場は必要と思いますぞ」
「うう、これはポイントを使っても作っておかないとだな」
洗い物をする必要はないかもしれないけど、水が出る洗い場と流し台があればキャンプ施設らしくなるよな。仕方ない、ユキに出してもらうか……
◇◇◇◇◇
そんなわけで、ユキに洗い場を出してもらった。水の出る蛇口は二つ。一つの大きな流し台に蛇口が二つ付いている屋外用の洗い場だ。これでキャンプがやりやすくなるはずだな。
火を消す事にも、水を飲むことも、洗い物をすることも……野菜を洗うこともできる! キャンプ施設としてはこれで最低限の設備は揃ったと思う。
宿泊はしてくれるなら嬉しいけど、寝袋かテント持参だな。雨風の心配はダンジョンだから必要ないけど。最悪そのままごろ寝でも大丈夫だ!
宿泊してくれたら……一人頭十時間くらいはいるだろうからポイントがウハウハだぜ。
洗い場を出したユキは腰に手を当てフウと一息つく。
「これでいいかしら?」
「ありがとう! これで完成かな?」
「まあ、バーベキューをする分にはこれでいいんじゃないかな。泊って行ってくれると嬉しいな……」
俺もユキと同じ思いだよ。泊って行ってくれると嬉しい……
「カラオケでもしながらゆっくりして行ってくれたらいいんだけどなあ」
「そうね。遊べるものがあればいいわよね。あとはお風呂とか」
「やっぱ風呂かあ。遊べるものかあ……卓球台とか?」
「お風呂から連想したでしょ! ダンスもあるじゃない。座敷童たちの」
「そうだな! よおし」
「次の冒険者が来るまで待つしかないわね……」
ユキはため息をつき肩を竦める。
うん。いくら施設を作っても冒険者が来なければ……早く次の冒険者よ。来てくれ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます