V リュメール

 やがて、朝がやってきた。リュメールの姿が小鳥へと変わる。その頃には南の国の上空だった。眼下に城が見えてくる。

 城の庭園から優しいハープの調べが聞こえてくる。庭園には花を咲かせた木々が植えられ、その中心に黄色い大理石でできたいおりが建てられている。ハープの音色はその庵から響いてくる。

 リュメールは足に矢を携え、枝から枝へと飛び移りながら、ハープを弾く女のもとに近づいた。

 女は非常に美しいわけではなかったが、優しい顔立ちをしている。ふっくらとした頬に、健やかな光が宿る瞳。ハープとともに口ずさむかわいらしい唇。はちみつ色の髪を高く結いあげて、色とりどりの石を散りばめた髪飾りをつけている。

 リュメールの心臓は痛んだが、あの弱虫の少年を幸せにするのは、この娘なのだ、と心に決めて羽ばたいた。そして、姫のハープの先に留まる。

「あら」

 姫が小鳥に気付く。小鳥が足につかんだ矢を目にして、驚いて声を上げる。

「まぁ、太陽の国の国旗だわ」

 国旗と矢がもたらされるということは、神の花嫁になるという意味だった。

 生まれた時からそのように教育された姫は、矢を見て覚悟を決めた。

「誰か」

 姫は、直ちに侍女を呼んだ。

 父王にこのことを知らさなければならないからだ。

 リュメールは軽く羽ばたいて、南の姫のひざに乗った。

「何て、かわいらしい」

 あいさつ代わりに鳴いてみせる。その歌声の素晴らしさに、姫は感動して、手元のハープを引き寄せると、かき鳴らした。

 知らせを受けた父王は、王子がこないことを心配したが、待っていてはらちがあかぬと、独断で太陽の国へ先に訪れることにした。

 こうして、リュメールは銀色の大きな鳥籠に入れられ、南の姫とともに太陽の国に旅立つことになったのだ。

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