0 少女
少女は、物語の登場人物たちと同じように成長した。
部屋に鍵をつけて、パパから身を守ることができるようになった。
泥酔して怒鳴り散らすママのことを無視できるようになった。
女らしく髪を長く伸ばし、化粧をした。その化粧も周囲を威嚇するように派手だった。
胸の内側にわだかまる怒りやさびしさを、少女は表にだすようになった。しかし、決してそれは両親にではなく、自分や友人たちに向けられた。
おとなしかった少女は乱暴になった。怯えていた幼い頃は、物陰でひっそりといろんなことが過ぎ去るのを見守るだけだったが、成長した少女はその怯えを怒りや衝動に変えた。
悪い仲間に入り、窃盗やものを壊したり、けんかをしたりするようになると、いつの間にか鏡の部屋にも隠れなくなった。心の慰めであった物語も紡がなくなった。あれほど大事にしていた、赤い髪の人形も放っておかれて、
空想の男の子も女の子たちも不幸になればいい、と思うようになっていた。
少女にとって空想は逃げ場だったはずだ。けれど、空想の中の女の子も男の子も苦しみだした。逃げ場ではなくなった空想は、ただつらいだけだったのだ。だから、そんなものなどに頼る自分を
少女は家に帰らず、派手で露出の多い挑発的な格好をして、仲間の少年たちと連れ立ち、遊び歩いた。
そうやって家に寄りつかなければ、パパやママに会わずにすんだ。
学校にもいかずに仲間たちといることで、苛立つ気持ちを紛らわすことができた。
そのうち、一人の少年が気になるようになった。少年は悪い仲間の一人だった。
悪ぶった格好に似合わず、少年は純朴に見えた。エレキギターをかき鳴らしながら、いつか大成してやると意気込んでいる。少女のからかいに照れたりして、ほかの少年たちとどこかしら、違っているような気がした。
ギターを
いつもそばに座り、彼の話に耳を傾けた。少女は彼が大スターになると疑わなかった。たとえ、少年がコンテストにでたりバンドを組んだりしなくても、その夢を一緒に見ることで、少女も楽しい気分になることができた。
少年と少女は次第に仲良くなっていき、自然と体を重ねるようになった。
少年との行為を少女は聖なることのように感じた。
汚くて価値のない自分が、少しでも美しくて意味あるもの、必要とされるもののように感じることができた。
その行為が多ければ多いほど、少女は自分が清められていくと信じた。
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