III リュメール

 リュメールも不安をいつも抱いていた。彼女は、エトゥワールよりもいろいろなことを知っている。自由を味わってしまった。怒りこそないにしても、いつか自分もエトゥワールもいなくなってしまうような不安があった。その不安は、庭にたたずむ乙女たちの像を見ている時の気分に似ている。足元の安定してない場所に立っているような、いつ足場が壊れてもおかしくない不安。そんな不安がふいにやってきて、リュメールをさいなむ。

 そんな時、リュメールはジェルミにすがりたかった。幼い時から共にいる人間。何度となく、闇の城に誘ったけれど、恐れていこうともしてくれなかったけれど。

 エトゥワールは次第に自暴自棄になっていった。闇の森に迷い込む人間と戯れるようになった。飽きると魔物に下げ渡し、何の感慨もなさげに、その人間の最期を見届けた。

 リュメールにとって、それはむごいことだった。血に汚れるのを嫌った彼女は籠から逃げだし、中庭に潜むようになった。

 そのことで、エトゥワールは更に荒れるようになってしまった。

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