第20話
川沿いを走らせ、道々の宿を求めて、自分の船を停泊させている港へ向かう。
三日三晩をともに過ごし、とうとうたまりかねてカイヨウはたずねた。
「今までいろんな女を相手にしてきたが、おまえみたいな女には会ったこともなかった。私はおまえを愛してる。おまえは? おまえは私を愛してるか?」
シェングの黒々と千々に乱れた髪を優しくもてあそびながら、彼女の無言の返事を待った。
彼女は顔をかれに向け、口許だけで微笑んだ。
喜ぶかれになされるがままになりながら、彼女は思った。
大声であざ笑いたい。この男の愚かしさを笑い飛ばしてやりたい。
心の中ではそう思うが、体がそれを表に出すのを拒んでいた。こわばった顔をわずかに引きつらせることができるだけ。
かれが重たく自分にのしかかる。
長く白い足を持ち上げて、片手でなでさすりながらおしひろげ、ほろ馬車の振動にあわせてかれが揺れ動いている。
「いいか」とたずねるかれの言葉が、何にも感じていない彼女の心に滑稽に響いた。
彼女は顔をそむけ、そっと手を伸ばして、ほろのほころびの穴を指でいじくった。
外の風景が、自分とは関係なく通り過ぎていく。
昼間の匂いがむせ返る日なたの体臭を漂わせている。
涼しい風が水の匂いを運んでくる。
水牛が物悲しくどこかで鳴いている。
漁師の小舟のまえを通ったのか、魚を追い立てる男たちの声が大きく、そして小さくなっていく。
耳許ではかれが彼女に愛の言葉をささやきつづける。
それに溶け込むように、淋しげな遠吠えが聞こえてくる。
一息ついてカイヨウが彼女の頬をなでさすった。
ほころびの外を見つめたまま、彼女は弱々しく口許だけ笑わせた。
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