第19話

 都を出るとき、カイヨウは自分とシェングのためにほろ馬車を用意させた。

 すっかり様子の違ってしまった彼女を見て、かれの部下たちは気安い口笛を吹いた。

 かれは縄で縛り付けたままの荷台のうえの小屋に目をやり、

「さぁ、あんたの手でえさをやってくるんだ。そのほうがいい。そして、私が主だと奴に教えるんだ」

 彼女は皿の残飯をじっと見つめていたが、とぼとぼとフーショウのところへいった。

 フーショウはすぐに跳ね起き、彼女の匂いを嗅ぎ付けた。哀れな声を張り上げ、彼女がきっとここに来てくれると信じきっていた。

 しかし、姿も見せず、えさが小屋の中に押し入れられただけだった。

 かれは引き戸のまわりで鼻を鳴らした。

 彼女はしゃがみこんだまま引き戸の前にいた。

 嗅ぎなれた汚物の匂い。

 今はとりすました男の匂いが自分を被い尽くしている。

 このまま地に倒れ込んでしまいたかった。

 白昼夢が自分を包み込み、目覚めるのを待っている。

 カイヨウが呼んでいる。その声がこのうえなく優しさに満ちている。

 彼女はふらふらと声のするほうへ歩いていった。

 自分はどこへいこうと云うのか。朦朧として、足の裏の感触すら定かでないのに。

 あの男はおとなしくて美しい、体のおさまり具合もちょうどよい女を手に入れたと思っている。

 その通り、かれはその彼女をすっかり気に入ってしまっていた。

 馬に乗る部下にほろを引かせ、仲むつまじく彼女といることを選んだ。

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