第8話
シェングは幼い息子を背に負い、暑い日差しを、かざした手から透かし見た。
十六年前に姉は子を産み、子供が自分で自分の世話ができるようになったころ、病気で死んだ。
寒さに彼女の白い肌が赤くなり、手は畑仕事にあかぎれている。長い黒髪を無造作に編みこんでおさげにし、肩から垂らしていた。
器量も悪くなく、嫁にいくまでに娘たちが覚えてしまうことはすべてこなせるようになったのに、幽鬼の出る噴墓に通いつめる不吉な女と陰口をたたかれ、彼女は十六歳を過ぎても嫁の貰い手がなかった。
しかし、今ではうまくやっている。
夫は武骨で地味な農夫だが、彼女の老父母のめんどうを見てくれる孝行義息子だし、かれの目を盗んで彼女が明け方と夕方に墳墓にいくことを許してくれている。
夜が明ける前に起き、裏の川へ水を汲みにいき、畑に水をまき、家畜に水をやり、彼女の頭の高さくらいある大甕に水を満たす。それから走って、冷えたまんじゅうと水を墳墓の甥に届けるのだ。
結婚するまでは少しは話をする暇もあった。ただし、相手の返事をまったく期待しないでいればのことだが。
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