第7話

 目が覚めた。

 暗がりの中で、シーファはワラと羊毛にくるまって、横たわっていた。

 じっと息をひそめて、彼女はこれも夢かもしれないと、本当の目覚めを待ちつづけた。

 しかし、それはこなかった。

 かわりに陣痛が彼女を襲い、今は現実の世界なのだと悟らされた。

 何時間も苦しみつづけて、やっと明け方に男の子を産んだ。

 汚いワラで赤ん坊をぬぐい、彼女は臍の緒をかみ切った。

 泣きわめく子供の顔に、朝日を当てる。けだものそっくりに歪んだ顔付きをしていた。

 父親ににてしまった。

 彼女は心に空虚なものが生まれるのを感じた。

 覚めることのない夢を見たあとに生んだ子供なので、フーショウと名付けた。

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