第6話

 シーファは夢を見た。

 まどろみの淵で自分が何者なのかすら忘れていた。

 がれきのうえにゆったりと寝転んでいる。

 不思議と堅くてでこぼこしたがれきが心地よく、大きなあくびをした。

 ここに住みつくようになってどのくらいの月日が過ぎたのだろう。

 彼女は思い出に舌鼓をうつ。

 このあぎとが、この翼が使われなくなって久しい。

 身体に蓄えた夢を長いこと貪ってきた。

 さっきまで自分は妙な夢を見ていたのだ。

 か弱いヒトで、支配されていて、閉じ込められ、未来が全くなかった。

 目覚めた彼女はさもおかしげに考える。

 夢の中の絶望や枯渇した気力も、目の覚めた自分にとっては味わったことのない余韻となって、心の中にいつまでも残っていた。

 食したヒトの人生を夢に仕立てて味わうことができる。その夢を最後まで味わいつくすと、体に浮かぶ夢の斑紋が消費されていく。

 体の斑紋がなくなれば、またヒトを求めて飛び立てばいい。

 十七年も前に味わった数千にも及ぶヒトの人生……

 しだいに眠りが自分のまぶたを重たくする。

 次にはどんな夢を見るのだろう。

 いつまでも終わることのない夢のつづきを知りたくて、目を閉じた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る