第4話
シェングは日に二度食べ物と飲み物を届けてくれた。
チャオシーケンは相変らず鼻を鳴らしながらシーファは腰にしがみつき、ふりはらってもふりはらってもこりることがなかった。
彼女は夜になるとしだいに気持ちが沈み、穴から陽光が差しはじめるのを待ち侘びるようになった。
西日が穴から漏れ出ると、彼女はすすり泣きはじめた。
チャオシーケンはますます動物じみていき、性欲を満たすことしか考えていない。
シェングが訪れて、自分と話をするときだけ、シーファは人間に戻ったように感じることができた。
そのうち、チャオシーケンは何も食べなくなった。ある朝目覚めると、彼女のうえで冷たくなっていた。
彼女はかれをどけ、穴のそばに体をちぢこませた。
まもなくして妹はやって来た。シーファはかれの死を告げた。
「どうしたらいいの?」
「姉さん、あたし、今のまま、食べ物をもってくる」
「ここから、出られないの?」
「そんなことしても、すぐにばれちまう。あたしじゃ無理だし、墓泥棒は家族もすべて死刑なのよ?」
「でも、シェング……あたし、つらいのよ。なんだか、自分が人間じゃなくなっていくようで……いつまでも覚めない悪夢を見ているみたいで」
「姉さん、夜中も来てあげようか? この辺り、最近幽霊が出るって、だれも寄りつかないの。夜中に女のすすり泣きが聞こえるんだって」
「泣いてるのはあたしなのよ……」
「夜、寝てないの? あたし、来てあげる」
「眠れないのよ。あたしのかわりにだれかが寝てくれてるみたいで」
シェングはその晩から墳墓の穴のわきで寝泊まりするようになった。
「大丈夫、父さんには羊の遊牧と云ってあるから」
妹はシーファにそう云った。
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